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COLUMN コラム

悠久の国インドへの挑戦

2017.08.28

「悠久の国インドへの挑戦」49 インド基礎知識そのVI:世界最大の民主主義国家

藤崎 照夫

西ベンガル州の風景

<何故世界最大の民主主義国家と呼ばれるのか>

 その理由は有権者が世界最大の人数だからということです。2014年の日本の衆議院に相当する下院総選挙時の有権者数は8億1,400万人でしたインドの総選挙は、18歳以上の男女が持っており国政選挙である下院の総選挙は世界一の規模を持つ投票となります。従って選挙は大変な作業となり2014年の下院総選挙では5週間に亘って実施されました。

 人口の大きい州になると投票は7~9回に分かれて行われるそうですが、一度でやりたくても選挙の管理や警備・治安の維持のための役人や警官の投入が出来ないことや場所の確保が出来ないためと言われています。2017年の春に実施された人口がインド最大の州(約1億9千万人)であるウッタルプラデッシュ州の州議会選挙では国政選挙ではなく州議会の選挙であったにも拘わらず実に7回に分けて投票が行われたそうです。

 私も駐在時代に「インドは広大な国だから山岳地帯にはヤクと呼ばれる牛に似た動物で投票用紙を運び、砂漠地帯にはラクダで投票用紙を運ぶのだ」とインド人の知人から聞いた記憶があります。それだけでなくこれは真実かどうかは分かりませんが、所謂路上生活者でも一定期間同じ場所で生活していれば投票権が与えられるそうです。これらの事実からもインドでの選挙が如何に大変かをご理解頂けるのではないでしょうか。

 国会や州議会の選挙は、政府から独立した選挙管理委員会が管理しますが、その権限は強くて選挙日程の決定、選挙運動の監視、投票の監視と確定、選挙違反の認定など大変多岐に亘ります。選挙の結果は彼等が認定しますが誰もその結果に異議申し立てはしません。それだけの権威と実績があるからです。しかもその委員はなんと僅か3名というのは驚きですね。

 インドでは国政も州の政治も必ず選挙で選ばれた行政の長や議会が担います。
 所謂途上国と呼ばれる沢山の国々ではクーデターや軍政が数えきれないほど実行されてきましたがインドでは独立以来、クーデターもなく軍事政権の経験もありません。途上国では稀有の例でありこれもインドが世界最大の民主主義国家と呼ばれる一つの証左ではないでしょうか。

 私が10年近くインドで生活して感じたことの一つは最高裁の権限の強さです。インドでは中央捜査局(CBIで米国のFBIに近い)の権限が強いと言われていますがこのCBIがもたもたしていると最高裁が捜査を命じることもありますし、最近の実例としては近年インドでは大気汚染が国民の間で大きな問題となってきていますが、行政の対応が遅いとして最高裁がデリーでの大型ディーゼル車の販売を一時停止する命令を出したこともあります。

 このような強い権限を持った最高裁を私はこれまで聞いたことがありませんがこの最高裁の決定には、政府はもとより犯罪者も含めた民間人も従います。
 最高裁は世界最大の民主主義国家を守る砦であると言えるのではないでしょうか。またインドの民主主義を支える一つが軍打と思います。インドでは軍は完全な文民統制の下にあり最高司令官は大統領で軍は首相、国防大臣などの文民に従うことになっています。
 今週はインドの民主主義についてまとめてみましたが如何でしたでしょうか。

藤崎 照夫

Teruo Fujisaki

PROFILE

早稲田大学商学部卒。1972年、本田技研工業(株)入社後、海外新興国事業に長年従事。インドでは、二輪最大手「Hero Honda」社長、四輪車製造販売合弁会社「Honda Siel Cars India」初代社長として現地法人トップを通算10年務める。その後、台湾の四輪製造販売会社「Honda Taiwan」の初代社長、会長を務めた後2006年同社退職。現在はサンアンドサンズ社、ネクスト・マーケット・リサーチ社等の顧問として活躍インド、アジア事情に幅広く精通している。

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