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COLUMN コラム

悠久の国インドへの挑戦

2018.05.07

「悠久の国インドへの挑戦」58 インド基礎知識そのXV:私の出会ったインドの人達(7)

藤崎 照夫

ウダイプルの風景

<2輪合弁会社の営業部長>

 今回ご紹介する人物は私が最初に駐在したHero Hondaという2輪合弁会社の営業部長のMr.Suriという名前の人です。彼は先月ご紹介したMr.A.C.の下で仕事をしていましたがMr.A.C.が工場長へ社内異動したのでその後を継いで営業の責任者になりました。
 彼の学歴などは知りませんが前任者のMr.A.C.が知性派とすればMr.Suriは行動派と呼べるタイプの人物でいつも動き回っているのが好きでした。

 私も元々は営業出身でしたので赴任後はしばしば販売店訪問をしましたのでMr.Suriとは一緒に行動することが多く彼の人となりを観察する機会も多かったのですがよく喋りよくお酒を飲む陽気な人物でしたが私の3年の駐在期間に起きた彼との特に忘れがたい思い出が二つありますのでこれについてお話ししたいと思います。私は海外駐在の時に気を付けていたことが幾つかあります。その一つは赴任した国の文化、習慣などを尊重すること、そして駐在員である我々は「ある期間その国で仕事をさせて貰っている」ということを忘れないで行動するということでした。

 従って何か現地の人がミスをしても人前では怒らないで後で本人に直接注意をし大声で叱責することはしないように心がけていました。しかし約10年間のインドでの駐在期間でただ一度大声で叱責したのがMr.Suri でした。それはこういう経緯がありました。

 ある日、日本の本社から市場の販売状況をまとめた資料を至急送って欲しいとの依頼がありました。その資料は私自身が作成できる内容ではなかったのでMr.Suri を呼んで依頼の内容を詳しく説明し3日後の午後まで私に届けて欲しいと依頼しました。彼は「イエス サー」と言って元気よく部屋を出て行きました。

 然しながら3日後の午後になってもMr.Suriから連絡がないので彼に電話をしてみると彼の部下から「Mr.Suriは1週間の有給休暇を取っているので不在です」ということで私の依頼した資料作成は彼の部下は聞いていないとのことでした。そこで彼の部下にすぐ私の部屋に来てもらい再度説明を行い資料作成を依頼し、本社には資料を送るのが遅くなる旨の謝罪の連絡をしました。

 それから数日後Mr.Suriが出社をして私の部屋に来ました。それまで「仏の藤崎」と言われていた私でしたが流石に彼の顔を見ると「一体今回の件はどうなっているんだ!
 貴方は営業部長という立場で私からの依頼を聞いた時に有給休暇を取ることが決まっていたなら何故私にその旨伝えて、その上で部下にきちんと伝えて指示をしなかったのだ」と言ったところ彼は流石に言い訳は通用しないと思っていたらしく「I fully apologize」と言って謝罪しました。インド人は一般的になかなか謝罪しない人たちと言われておりApologizeと言うのは極めて珍しいと思いました。彼には今後二度とこのようなことのないようにと言って本件は終了しましたが今でも記憶に残る出来事でした。

 もう一つ彼について印象に残っていることがあります。前述の件があってから約1年位経った頃に彼が自分で車を運転していて事故を起こし重傷を負って長期入院をした後私の部屋に来て「無事に退院しました」と言うので彼に「これからは十分に注意して安全運転をするように」と言った後に彼が言ったのは「今回は事故に遭ってしまいましたが神様が守ってくれて無事でしたからこれからは事故には遭わないと思います」という言葉でした。それを聞いた時に私は「本当に懲りない男だな」と思いました。彼の家族は自慢の美人の奥さんと可愛いお嬢さんでしたが今も元気に陽気に生活を楽しんでいるのではないかと思っています。

藤崎 照夫

Teruo Fujisaki

PROFILE

早稲田大学商学部卒。1972年、本田技研工業(株)入社後、海外新興国事業に長年従事。インドでは、二輪最大手「Hero Honda」社長、四輪車製造販売合弁会社「Honda Siel Cars India」初代社長として現地法人トップを通算10年務める。その後、台湾の四輪製造販売会社「Honda Taiwan」の初代社長、会長を務めた後2006年同社退職。現在はサンアンドサンズ社、ネクスト・マーケット・リサーチ社等の顧問として活躍インド、アジア事情に幅広く精通している。

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