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COLUMN コラム

悠久の国インドへの挑戦

2018.08.27

「悠久の国インドへの挑戦」62 インド基礎知識そのXIX:インドの財閥について(3)

藤崎 照夫

1)先月号でインドで大きな力を持っていた東インド会社について述べましたが今日はこの会社の最期について先ず触れてみたいと思います。インドから安い綿製品をイギリスへ輸出する東インド会社は、政治的に力をつけつつあった英国綿製品業界と対立するようになりました。英国綿業界のロビー活動もあり、英本国は東インド会社の堕落を懸念し、段階的に規制を強化し1813年にインド貿易の独占廃止、1833年には中国貿易の独占廃止を実行しました。

 また同時期に東インド会社軍による植民地インドの征服が進み、支配地域はベンガル地域からインド全域に達し、もはや英本国にとって軍事的意味を失い、意図的に弱体化させられたのでした。インド商人からみれば、東インド会社との取引から、英国の自由商人、元東インド会社社員との取引に移行して行ったのです。その後の東インド会社は1857年にセポイの乱(インド大反乱)が発生すると、その責任を取る形で翌年に消滅し歴史の幕を閉じたのです。

2)インドの大財閥:インドでは数多くの財閥グループが存在しますがその中で三大財閥と言われるのがタタ、リライアンス、ビルラ財閥です。これから順を追ってご説明していきたいと思いますが、先ず最初はタタグループです。タタグループは鉄鋼、自動車、IT(技術情報)などなど100社以上の傘下企業を抱え1,000憶ドル以上の企業価値を持つインド最大の財閥グループです。

 この巨大な企業集団を統括する持ち株会社「タタ・サンズ」と「タタ・インダストリーズ」のトップが会長のラタン・タタ氏です。筆者もインド駐在中に自動車工業会の会議などで何度かお会いしたことがあります。同財閥の事業分野は七大部門「IT・通信」「エンジニアリング・プロダクト(自動車や耐久消費財を含む)」「素材」「サービス」「エネルギー」「消費財」「科学」に分かれますが、収益貢献度からみて前者の三つがタタ財閥の中核事業と言えます。

 ちなみに筆者が勤務していたホンダは1980年代初頭のインド第一次自由化による自動車国産化計画に沿って、このタタグループと組んでインド市場への参入を計画しましたが当時のインドの外貨事情などにより認可が得られず1996年に改めて合弁会社を設立しインド自動車市場への参入を果たしたという歴史があり、私自身が初代社長を務めることとなった次第です。

 一寸余談が入りましたが、自動車事業を担う「タタ・モーターズ」は現在、商用車国内最大手、乗用車では国内三位です。同社は10万ルピー(約30万円)の超低価格車「ナノ」の発売によって世界的に注目されましたが、本来は商用車メーカーです。最近は「海外企業の買収」によりグローバル化を推進しており2004年に韓国大手自動車の商用車部門を買収して以降、スペインのバス大手ヒスパノ・カルセラ、日産の南アフリカ工場などを続けざまに買収し、2008年には米フォードから名門の英国ジャガー部門とローバー部門を23億ドルで買収するなど、買収攻勢でも世界的に知名度を高めてきています。

 同財閥の鉄鋼事業を担う「タタ・スチール(以下タタ製鉄)」は粗鋼生産量で世界10位にランクインする世界的大手の鉄鋼会社です。同社は2007年に同業大手の英蘭系コーラスを買収したことで現在の世界的地位を確立しました。また国営の鉄鋼石最大NMDCと共同で資源開発を行い、鉄鉱石商社の国営MMTCと合弁で海外資源の買収を行うなど国内外からの鉄鉱石調達の安定化を図っています。

 同財閥のITサービス事業を担うのが業界最大手「タタ・コンサルタンシー・サービス」です。同社は、タタ財閥傘下企業の中でも利益貢献度が高く、事業ポートフォリオ上重要な虎の子といえる企業となっています。そのため持ち株会社タタ・サンズによる株式保有率が7割超と高くなっています。今回はタタ財閥のビジネスの概要について触れましたが来月はそのルーツと発展の歴史について述べたいと考えています。

藤崎 照夫

Teruo Fujisaki

PROFILE

早稲田大学商学部卒。1972年、本田技研工業(株)入社後、海外新興国事業に長年従事。インドでは、二輪最大手「Hero Honda」社長、四輪車製造販売合弁会社「Honda Siel Cars India」初代社長として現地法人トップを通算10年務める。その後、台湾の四輪製造販売会社「Honda Taiwan」の初代社長、会長を務めた後2006年同社退職。現在はサンアンドサンズ社、ネクスト・マーケット・リサーチ社等の顧問として活躍インド、アジア事情に幅広く精通している。

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