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COLUMN コラム

悠久の国インドへの挑戦

2019.12.24

「悠久の国インドへの挑戦」78 インド基礎知識そのXXXIII :インド人との付き合い方(3)

藤崎 照夫

ハイデラバード

 今回は前にご紹介した故清好延氏の著作からの引用も含めて話を進めて行きたいと思います。インドに来てビジネスで失敗する日本人、企業や逆に成功する日本人、企業を私自身の駐在経験から数多く見てきましたが今日はその話から始めたいと思います。
 先ず失敗する日本人ですが、その多くは自分たち日本人は色んなことを知っていたり経験をしていて偉いのだと思っているケースです。

 そのような人達は前提条件として「インド人は困っている」と思い込んでいる人が多いのではないかと思います。インド人に教えてやるのだとかインドを助けるのだという顔をしたり態度を取ってしまうのではないでしょうか。教える側と教えられる側の立場を期待して事に当たると大概の場合うまく行かないケースが数多く見られます。例えば技術援助のケースを考えると一般的に日本側はインド側は困っていると考えます。

 然しながらインド側は対等な立場で技術を挿入することを考えています。インド側からすれば、日本側は技術料を得るのであるからそれなりに儲かるのだからと対等な立場で話し合いに臨みます。教えるという立場には上下の関係が入りますが。技術の売買には上下の関係はないとインドの人は考えるのです。私が実際に聞いたある実例があります。それはインドのあるメーカーと日本の大手の製造メーカーの技術支援交渉に関する話です。

 日本のメーカーの交渉担当者はやり手と言われる部長でした。その部長は何度も相手側と交渉の場に臨みましたが彼は相手が自分たちの持っている技術が絶対に欲しいと確信していたので最初から強気の交渉態度で臨みました。そして最後の相手側の社長との交渉で「これが最後の条件だ。これが飲めなければ交渉は終わる」と言ったのです。その態度が相手側の社長の逆鱗に触れてしまったのです。

 先方の社長は「確かに日本のそのメーカーの技術は我が社にとって必要なものだが交渉はお互いの信頼の上に立って行うもので一方的に膝を屈して行われるものでは無いはずだ」と考えたのです。それでその社長は改めて他の日本の製造メーカーを捜して交渉し新しい技術を挿入したのです。これは相互信頼、相互尊敬が如何に大事かという良い例ではないかと思います。


 話は代わって少し古い話になりますが2004年に大津波が起こりインドが甚大な被害を受けた時日本はインドを援助しようとしましたが、インド政府からは要請が来ず日本政府は非常に困ったと言います。誇り高く、オウンリスクの考え方のインド政府は、他国に自国の被害を助けてもらうことは考えなかったのです。自分たちの力で乗り越えられると考えていたから国際的に支援を頼むほど困っていなかったのでしょう。

 インドは他国の援助に対し頭を低くして謙るというやり方を取らないと言われています。国家の威信をかけての国際舞台では自分が弱いとは口が裂けても言いません。日本の財務省などではいまだにインド人の頭の高さは何とかならないのかという議論があると聞いた事があります。頼み込まれなければODAを行わない日本の政府の要請主義のやり方を、インドの役人は陰では傲慢だと評価しているとも言われています。

 その一方で私はいくつものインドで成功した日本企業も見てきました。それらの企業には共通点があると思います。合弁企業での成功例の理由はパートナー同士の「相互信頼」が前提かつ絶対条件ではないでしょうか。このコラムでも私自身の経験で合弁の成功例と失敗例を詳細に記述した記憶がありますが、お互いに対等な立場でそして相互信頼の上でビジネスを進めるというのはインドだけではなく万国共通のビジネスルールではないかと思料します。

 また成功する人や企業は「市場」に対しても「お客様」対しても常に謙虚だというのは共通項ではないでしょうか。「自社の製品は他社製品より優れているから売れないのは消費者の見る目がないからだ」などと市場に対して謙虚でない会社や人は失敗するケースが多いのではないでしょうか。我々メーカーでよく使われる言葉にQCDという言葉があります。Q=Quality(品質)、C=Cost(売値)、D=Delivery(納期)の略ですがこのいずれが欠けてもお客様の満足は得られないのではないでしょうか。

 具体例を挙げてみますと家電製品です。インド市場にはいくつもの日本メーカーが進出しています。インド人の多くは「日本製品は確かに品質は優れているが値段が高い」と言います。一方インド製品に対しては「値段は安いが品質が良くなくてよく故障する」という声を多く聞きます。この市場の声を吸い上げて成功したのが韓国メーカーです。
 値段はインド製品より高いが品質はそれなりのレベルということでインド市場で高いシェア―を取っています。これは上述のQCDでお客様の満足を得ているからです。
 今月はこれで擱筆します。

藤崎 照夫

Teruo Fujisaki

PROFILE

早稲田大学商学部卒。1972年、本田技研工業(株)入社後、海外新興国事業に長年従事。インドでは、二輪最大手「Hero Honda」社長、四輪車製造販売合弁会社「Honda Siel Cars India」初代社長として現地法人トップを通算10年務める。その後、台湾の四輪製造販売会社「Honda Taiwan」の初代社長、会長を務めた後2006年同社退職。現在はサンアンドサンズ社、ネクスト・マーケット・リサーチ社等の顧問として活躍インド、アジア事情に幅広く精通している。

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