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COLUMN コラム

名作にみる美しい英語

2020.06.22

名作にみる美しい英語(165)

原島 一男

 “The little girl (Dorothy) gave a cry of amazement
 and looked about her, her eyes growing bigger and bigger
 at the wonderful sights she saw.”

 (from “The Wonderful Wizard of Oz” by L. .Frank Baum)

 「その少女ドロシーは歓声をあげ、周りを見渡しました。
  彼女が観たすばらしい景色に見惚れて彼女の瞳はどんどん大きくなりました」
   (ライマン・ フランク ・ボーム作「オズの魔法使い」)

 小説や映画などの名作から選んだ美しい英語を紹介する連載。
そのフレーズが生まれた時代や背景を色濃く伝え、使った人の気持ちを具体的に表します。それをじっくり観察することで、あなたの今の英語を鍛えあげましょう。言うまでもなく、一つのフレーズだけでは、その作品の全貌をつかむことはできません。しかし、それが、あなたの感性を刺激することもあるかもしれません。

   愛犬トトと一緒にアメリカ中央部カンザス州から、たつまきに巻きあげられ、魔法の国(the land of the Munchkins)に迷い込んだ 少女ドロシー(Dorothy) 。そこで、彼女は Tin Scarecrow lacking brains (知恵がない、かかし)、 Tin Woodman without a heart(心のない、ブリキのきこり)、Cowardly Lion (臆病な、勇気のないライオン)と出会い、彼らとともに繰り広げる冒険の旅のお話。

  “The little girl (Dorothy) gave a cry of amazement and looked about her,
her eyes growing bigger and bigger at the wonderful sights she saw.
   The cyclone had set the house down very gently - for a cyclone -
in the midst of a country of marvelous beauty. ...”

「その少女ドロシーは歓声をあげ、まわりを見渡しました。
 そこで彼女が観たすばらしい景色に見惚れて彼女の瞳はどんどん大きくなりました。
 たつまきは、その家をそっと ー たつまきにしては ー そっと穏やかに
 驚くほど美しい田園地帯の真ん中へ運びこんだのです・・・」

 (ライマン・ フランク ・ボーム作「オズの魔法使い」)

・a cry of amazement  = 喜びの叫び →  歓声
・grow bigger and bigger = より大きくなっていく 
・in the midst of = ~の最中(さなか)に/の中で 
  cf. : in the midst of the Corona crisis (コロナ危機の最中に)
・a country of marvelous beauty = 素晴らしく美しい田園地帯。
  country はこの場合「田舎の」/「田園の」です。
  ところで、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」第1楽章の表題の英訳は
  "Awakening of Cheerful Feelings upon Arrival in the Country”
 (田舎に着いたときの晴れ晴れとした気分の目覚め)ですが、
 この country を思い出しましょう。

 20世紀はじめに出版された “The Wonderful Wizard of Oz” (オズの魔法使い)はアメリカの児童文学の古典です。
原作者ライマン・ フランク ・ボーム(1856‐1919)はアメリカのニューヨーク州生れ。新聞記者や雑誌編集などの職業を経て、40代で童話の創作を始めました。1897年には『散文のマザーグース』で注目され、1900年に発表した、この『オズの魔法使い』がベストセラーとなりました。その後『オズの魔法使い』の続編は20年間にわたり全14巻が執筆されましたが、シリーズ誕生から100年以上が経つ現在でも世界中で愛読される不朽の名作となったのです。
 それを映画化した「オズの魔法使」は16歳のジュディ・ガーランドを有名にしただけでなく、主題歌の「虹のかなたに」を世界に広めました。そして、最初の「オズの国」のシーンは新開発のテクニカラーで撮影され,カラー映画の先がけになりました。

 ここで映画の場面から。
 ドロシー(ジュディ・ガーランド)と犬のトトは、
突然のたつまきに吹き飛ばされて「オズの国」に着きます。ドロシーの一声。

DOROTHY: Toto, I've a feeling we're not 「トト、ここはもう、
           In Kansas anymore.                      カンザスではないみたいよ。
                We must be over the rainbow.       きっと、虹のかなたに居るのよ」

 そして、ドロシーとトトは、そこで仙女グリンダに会います。
DOROTHY: Now I know we're not in Kansas.「もうカンザスには居ないんだわ」
GLINDA: Are you a Good Witch or            「あなた、良い魔女、
           a Bad Witch?                          それとも悪い魔女?」
DOROTHY: Who me?  Why, I'm not a    「私!?私は魔女じゃないわ。
               Witch at all. I'm Dorothy Gale     ドロシー・ゲールです。
               from Kansas.          カンザスから来ました」
GLINDA:  Oh, well, is that the Witch? 「そう。じゃあ、あれは魔女?」
DOROTHY: Toto? Toto's my dog.      「トトのこと?トトは私の犬」

-「オズの魔法使」(The Wizard of Oz  1939 監督:ヴィクター・フレミング 脚本:ノエル・ラングレー/フローレンス・リューソン/エドガー・アラン・ウルフ 原作:ライマン・フランク・ボーム)

・ I’ve (have) a feeling =「~のような気がする」という定型表現。後には that が略されています。  
・  feeling = 感じること、感情、感覚。 
  形容詞を伴うと、good feeling (よい気持ち)、 strange feeling(不思議な感覚)、
   weird feeling (おかしな感じ)などとなります。
・ We must be over the rainbow. 
  =「わたしたちは虹を越えたところに居るに違いない」→「きっと、虹のかなたに居るのよ」
 

 このジュディ・ガーランドが歌っている “Over The Rainbow” の作詞はエドガー・イップ・ハーバーグ(Yip Harburg)、作曲はハロルド・アーレン(Harold Arlen)で1939年のアカデミー歌曲賞を受賞しています。それ以来、多くのジャズ演奏者などに取り入れられ、今になっても、いつでもどこでも聴くことのできる名曲中の名曲になりました。
 つい先日、5月22日にTOKYO FM で放送された村上春樹さんが選んだ「明るいあしたを迎えるための音楽」という番組でも、 Ella Fitzgerald のヴォーカルと口笛のプロの Fred Lowery の二つの “Over The Rainbow” が流されました。
 お聴きになった方も居られることでしょう。
 村上さんは、この番組の中で好きな曲目を紹介しただけでなく、コロナ危機への対応についても示唆に富む独自の考えを披露していました。村上さん:「この『自粛期間』を経験して、僕らの生活にとって『なくてはならないもの』と『なくても別に困らないもの』が見えた。そういう『社会的実験』が世界規模で行われたんじゃないでしょうか」

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原島 一男

Kazuo Harashima

PROFILE

一般社団法人内外メディア研究会理事長、ノンフィクション作家。慶應義塾大学経済学部卒業。ボストン大学大学院コミュニケーション学科に留学後、1959年NHKに入局。国際局で英語ニュース記者・チーフプロデューサーを務める。定年退職後、山一電機株式会社に入社、取締役・経営企画部長などを務める。現在、英語・自動車・オーディオ関連の単行本や雑誌連載の執筆に専念。日本記者クラブ・日本ペンクラブ会員。『店員さんの英会話ハンドブック』(ベレ出版)、『オードリーのように英語を話したい!』(ジャパン・タイムズ)、『なんといってもメルセデス』(マネジメント社)など、著書多数。

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