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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2017.06.12

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第48回)中国ビジネス余話

菅野 真一郎

黄山:中国・安徽省にある景勝地。

(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その8)

 ③悪徳ブローカーの事例(その6)

 今回も前回に引き続き中央・地方の行政のトップあるいは行政機関が関わる案件でも注意(用心)する必要があるという事例をご紹介します。

 日本では斯業界有数の大型量販店B社の中国進出にまつわる、地方政府関連天下り先機関からの店舗建物慫慂の事例です。
 沿海地域の大型都市への1号店出店にあたり、市政府の元高級幹部C氏(市政府の天下り機関のトップ)から市内繁華街の出入り口にある7階建て鉄筋コンクリート建物を紹介され、初めての中国進出ということでご相談がありました。すでに買収を決め、成功した場合はC氏に多額の成功報酬を支払うことも約束されていました。
 私は「最初の中国プロジェクトは小さく生んで大きく育てる」考え方からすると、数十億円の建物買収はその後の改装費用や商品仕入れ、その他の初期投資がかなりの高額になることから、慎重に検討するよう申し上げました。しかしC氏は多額の成功報酬を目当てに大変な勢いで建物の売買契約締結を進めているのをB社の他の幹部から聞いて、「中国での不動産関係はまず権利関係の確認」の鉄則に従い、「少し調べさせてほしい」とB社幹部に伝えました。現場、現物を実査したところ、市内でも有数の繁華街の大通りに面しているのに長いことテナントもなく雨ざらしで手入れされていない様子(窓ガラスの汚れ具合や1階の出入り口に物が乱雑に置かれている様子など)に不審を抱き調査して分かったことは、建物のオーナーは市内の黒社会のボスで市長もろとも贈収賄で投獄され刑死していること、建物各階には異なる金融機関の抵当権が登記されていて建物処分の話し合いが長い間まとまらないこと、当該市出身の私が勤めていた銀行の職員によれば「母は自分でも理由は判らないが近づきたくない建物と言っている」由。
 これらを踏まえてB社に対しては「胡散くさい建物は避けて、初期投資は極力圧縮すること」をアドバイスしました。
 B社は日本では店舗展開のプロを多数擁している有力企業ですが、本件では市政府の元高級幹部の慫慂物件ということで入念に行うべき事前調査に抜かりがあった感じがします。予想通り抵当権者の話し合い合意に時間がかかり予定より2年以上遅れての開業となりました。B社の幹部は「中国での店舗建物の買収はこりごり」とこぼしているそうです。

 日本でも有力な自動車部品メーカーが中国進出にあたり、中国の自動車産業を所管する旧機械工業部の大臣クラスのトップの斡旋で比較的短期間で進出に成功したものの、当該トップや付き人から大型鍛造プレス設備について価格が日本製輸入に比べ半分近い中国製を慫慂されて購入したものの、精度や性能が劣悪で、結局日本から輸入し直したために、初期投資が大きく膨らんだ事例もあり、行政のトップや要人の仲介といえども決して油断ならないことを教えてくれています。中国製機械がすべて使い物にならないということではなく、よく調査吟味して判断すべきであると思います。

 中国でも有名な歴史遺産がある一大観光地に、地元の省長からの勧めで建てられたファイブスターの日系ホテルは、昔の墓場の跡地にあり、地元の人は結婚式やお祝いの宴会には利用したがらないという事例もあります。これも長年手つかずで残っている好立地の当該土地の由来などは事前調査をしっかりやれば判明したはずですが(私も家族連れで観光した時雇ったタクシーの運転手から聞いて集客力がない理由を納得しました)、まさか省長がそのようないわくつきの土地を慫慂するなど、当時は想像もつかなかったということでした。

(つづく)

菅野 真一郎

Shinichirou Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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