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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2017.07.10

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第49回)中国ビジネス余話

菅野 真一郎

広州市:中華人民共和国南部の広東省の省都で人口700万人を有する華南最大の都市

(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その9)
 
  ③悪徳ブローカーの事例(その7)

 これまで悪徳ブローカーの事例を,日本企業の役員と親しい人物を介して間接的に接近しくるパターンや、中国政府や地方政府の要人の子息や子息と称する人物のパターン、行政トップの紹介する土地や建物、機械がいわくありのパターンなどに分類してご紹介してきました。今回は敢えてパターン化はしにくいけれどもよくある悪徳ブローカーの事例をご紹介します。

 日本で有数のAVメーカーが、某沿海都市の郊外での工業用地取得の相談にお見えになりました。プロジェクトの責任者は海外事業担当常務で、後に社長に就任された実力者です。常務のご案内で現場に行くと、既に地元の鎮長(日本の村長にあたります)と香港の女性ブローカーのマダム・チャン、それに東京の著名な中国レストランの女性社長の息子が待ち構えていました。一級国道に面した広い農地です。しかし、国道と農地の間には農業用水路があります。敷地内には小さな溜池があります。敷地の隅には高圧の電線が斜めに走っています。鎮長は必死にまくし立てます。
 「農地転用の交渉に協力します。農業用水路に蓋をかぶせ、溜池は小さいので埋立てるよう農業委員会との交渉に協力します。高圧線は敷地内を外して張り替えるよう供電局(電力会社)との交渉に協力します。この土地代は周辺のどこよりも安く優遇します・・・・」。
 私は責任者の常務に申し上げました。「鎮長は農業委員会や供電局との交渉に協力すると言っているだけです。交渉して解決するとは言っていません。外国人や外国企業が農業委員会や供電局と交渉するのは至難の業です。大変な時間とエネルギーを要します。最後はお金で解決せざるを得ません。結局は相当割高な土地になりかねません。時間もかかりますから工場建設を急ぐなら別の土地を捜すべきです」。

 しかし、鎮長と一緒にこの土地をすすめるブローカーのマダム・チャンは、本社の中興の祖といわれる実力会長ご指名の人物であるため(どうやら実力会長とマダム・チャンの仲介者が、実力会長が常連の中国レストランの女性社長のようです)、常務も簡単には断り難く大いに悩んでいました。私は当該都市でゼネコンの合弁の総経理を務める日本人の一級建築士の知人に現地を評価してもらいました。我々が述べた理由の外に更に3~4点の専門家としてのコメント(近辺の建築案件の経験から見て軟弱地盤、土壌汚染リスク、工場排水の排水溝工事の必要性―農業用水路には流せない等々)を挙げて、「工場建設を急ぐならよそにもっと条件が良い土地がある筈」と言われました。常務も専門家の指摘に納得して、本社会長に報告し了承を得て、そこから車で30分ほど離れた国家級の工業開発区に土地を求めました。後日東京のくだんの中国レストランを利用した時、上海で立ち会っていたレストランの女性社長の息子さんから「あの時のあなた方のアドバイスは正解でした。実は土地売却が成功したらマダム・チャンは鎮政府から市内の別荘(一戸建て住宅のこと)を一棟もらえることになっていました」と吐露されました。もっとも典型的悪徳ブローカーの事例です。
 
 この事例には日本と中国の言葉の問題があります。
 中国で行う合弁契約書に、合弁スタートまでに日中双方が整えるべき事項の中国側、日本側の役割を書き、それぞれ「責任をもっていつまでに処理する」旨が書かれてあります。日本側はしっかり履行しているにも拘わらず、中国側は履行していないことがよくあります。日本側が「責任をもって処理すると書いてあるので履行してほしい」と言うと、中国側曰く「責任をもってやるというのは『協力する』ということです。我々は協力しないとは言っていません。これを処理する費用を自分たちが負担して処理すると言ったことはありません」と平然と言い放ちます。

 日本と中国は漢字が同じでも言葉の意味や概念が異なることがよくあります。このケースで鎮長が言う「交渉に協力する」は、当該交渉がいかに困難かわかっているだけに「協力」はせいぜいアポイント取得程度で、鎮長が実際に交渉することはありません。日本でよく使われる「以心伝心」「一を知って十を知る」という概念は中国人にも、欧米人にも全く通用しないことを我々日本人はよく認識すべきだと思います。

(つづく)

菅野 真一郎

Shinichirou Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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