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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2017.11.13

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第53回)中国ビジネス余話

菅野 真一郎

 黄山:中国・安徽省にある景勝地。

(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その13)

 ③悪徳ブローカーの事例(その11)

 これまで10回にわたり外資企業(主として日系企業)の中国進出にまつわる華僑系の悪徳ブローカーの事例をご紹介して参りました。今回は事例の最終回で、日本人や中国人の“大学教授”などのインテリが悪徳ブローカーまがいの動きをする事例をご紹介いたします。

 中国の比較的大きな都市のマスコミ界出身で、日本でも名が通った私立大学の中国人の教授Y氏が、副業で日本の金融機関と顧問契約を結び、各地で当該金融機関の顧客向けの「最近の中国事情と・・・」といった講演会の講師を務めていました。
 流暢な日本語で中国の役所の“友人”からのホットな“情報”を織り交ぜながら、講演会はいつも比較的盛況ということでした。
 あるとき当該金融機関のトップクラスの知人から「Y氏の話の内容をチェックして、感想を聞かせて欲しい」との依頼を受け、60分ほどのY氏の講演を聴講する機会がありました。「今朝一番に、北京の金融当局にいる親しい友人から今日の講演会のために電話をして聞いたホットな情報です」と前置きして、当時の為替管理規制緩和の政策の動きを得意げに披露していました。しかしこの情報はすでに一週間以上前に新華社報道の日本語版「日刊中国通信」で報じられていた内容で、特別とっておきの情報というほどのものではありませんでした。ほかにも同じような中国ビジネスの世界では周知の情報を、さも特別ルートで仕入れた情報のように得意げに話す場面が幾度かありました。
 講演会の後の懇親会では聴講した企業経営者と積極的に名刺交換を行い、「一度ゆっくりお話を聞きたい」という経営者にはその場で会食懇談を申し込んでいるというのが、当該金融機関の担当部長の話でした。私はY氏のハッタリ臭い話の内容と金融、経済、経営に詳しいわけでもない経歴から見て、取引先経営者との接触には注意が必要ではないかとの感想を伝えました。折りしも私が地方出張の際、羽田空港の待合室で中国を特集している月刊雑誌を読んでいると、Y氏の2~3ページの「中国進出支援活動」のエッセーが目に留まりました。「いま中国進出の相談が多く忙しい・・・・」「毎週土・日の週末は中国出張です・・・・」「日中の架け橋として貢献したい・・・・」と言った文章が随所に出てきます。週末中国に行っても行政機関は基本的に休みですから、そういう時の中国進出支援というのはとてもまともな仕事とは思えず如何なものかと感じたことを覚えています。当該金融機関も間もなく顧問契約を打ち切ったということです。
 そもそも中国の経済政策、金融政策などに関する情報や経済指標の情報はすべて国家のスクリーニング機関でチェックされたものしか公表されず、従って“とっておきの情報”はすべて周知のものしか我々外国人や中国の民間人には入手できない仕組みになっています。このルールを破った行政官は処罰されますし、そのような事件も耳にします。

 ほかにも日本の私立大学の日本人教授が、有償で企業の中国進出のアドバイスをやっている例を見かけますが、勤める大学の正式の了解を得たうえでの仕事かどうか、よくよく確認する必要があると思います。そうでないと平日授業に差し障る中国出張などは難しく、ついつい週末に行くようなケースにならざるを得なくなり、まともな仕事は難しくなると思います。そのせいか、国公立大学の教授のかかる例は、あまり聞いたことがありません。
 また、有名なアメリカのコンサルティング会社日本法人出身の日本人エコノミスト・評論家が、それまでの反中国から親中国に宗旨替えして中国の地方政府要人に近づき、その“人脈”を誇示して自分が顧問契約を結んでいる日本企業の中国進出のアドバイスや合弁契約書作成に関わり、泥縄で杜撰な合弁契約内容のため当該プロジェクトが頓挫・撤退したという事例もあります。
 悪徳ブローカーは華僑系に限らず日本人のインテリにも複数いることに留意すべきと思います。
 以上、11回にわたる「悪徳ブローカーの事例」の項は、ひとまずここで閉じたいと思います。

(つづく)
  

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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