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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2018.01.22

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第55回)中国ビジネス余話

菅野 真一郎

北京

(5)閑話休題「上海日本人学校誕生と寄付集め」(その2)

 前回は1984年初めて家族帯同で上海に赴任し、上海日本人学校を立ち上げ開校した背景と経緯を述べ、開校に際して必要な運営資金2,000万円の調達に携わったお話をしました。

 2度目の上海駐在は1991年から3年間上海支店長として単身赴任しました。天安門事件で減少した生徒が増加に転じ、1993年初めには100名を越え、間借りの校舎では手狭になり、自前の校舎建設が決まりました。当面600名を収容出来る校舎、しかもプール、体育館、運動場を備えた本格的小中学校をつくるには24億円が必要で、海外子女教育財団の補助(必要資金24億円の50%、12億円)を得るには、残り50%12億円の募金を我々父兄が集めなければなりません。前回の日本人学校立ち上げの運営資金調達の経験者という理由で私は寄付金集めの担当になりました。

 ある日同じマンションに住む顔なじみの駐在員の奥さんから「父兄は皆新校舎のことを知りたがっている」と言われ、寄付金協力のお願いを兼ねて説明会を開きました。間借りの校舎の講堂の会場は100名以上の父兄で超満員。壇上に立ってびっくりしたことは、聴衆は全員お母さん達です。大きな体育館や広い運動場を備えた自前の校舎建設の話に喰い入るような熱い視線を感じ、私も熱が入って40分以上もしゃべってしまいました。説明しながら話の落ちを考えていて名案が浮かびました。

 「最後にお集まりのお母さん方にお願いがあります。今晩ご主人が帰宅されたらすぐには家に入れないで下さい。校舎建設資金の寄付の話がきたらどうするか聞いてみて下さい。考え込んだり、検討すると言ったり、本社と相談すると言ったら『今日から家に帰ってこなくていい』『家には入れられない』と宣言して下さい。二つ返事で協力すると言われたご主人は良い人です。家に入れてお酒を振舞ってやって下さい。」

 後日奥さん方から「説明会の帰り道は、『今晩だんなが帰ってきたら手ぐすねひいて聞いてみよう』という話でもちきりだった」と言われました。実際の寄付集めは後任の支店長に託し、私は1994年帰任しました。12億円という寄付集めは相当な金額で、その後2代に亘る後任支店長からは会う度に「営業の新規開拓よりもきつい仕事」とぼやかれましたが、よく頑張ってくれたと感謝しています。

 新校舎(虹橋校)が落成して初めての入学式は、下記の年譜によれば294名の生徒を迎えて1996年4月に挙行されました。
 600名収容の新校舎も完成後2~3年で満杯となりたちまち増設を余儀なくされ、2006年には浦東校舎も完成し、虹橋校舎、浦東校舎の2ヵ所体制になり、2011年には高等部も開校して、世界一のマンモス日本人学校になっていることは、前に述べたとおりです。

 二期目の習近平体制は、周辺諸国との宥和政策にかじを切り替えようとしており、日本の安倍政権も中国との関係改善に意欲を示すなど、日中関係もようやく明るい兆しが見え始めています。今度こそ日中関係が正常化し、政治も経済を含む民間交流も再び活発化し、日本人駐在員も増え、日本人学校の在校生も増え、明日の日中関係を担う草の根交流の民間大使が次々排出されることを期待したいと思います。

以下に、2016年に創立30周年を迎えた上海日本人学校事務局の資料から、上海日本人学校の簡単な年譜を記します。

1975年  総領事館(和平飯店)の一室を借りて「上海補習学校」を開設
      授業は週1回【児童生徒数:7名】
1978年  総領事館の移転に伴い教室移動、和平飯店―→准海中路(現総領事公邸)
1979年  全日制に準じる授業開始、授業は月曜日から土曜日まで
1987年  上海日本人学校開校(梅龍校舎)
      第1回入学式・始業式【児童生徒数:61名】
1996年  虹橋校 開校式・始業式【児童生徒数:294名】
      創立10周年記念式典
1997年  日中国交正常化25周年記念第1回中学生中国語・日本語スピーチ大会開催
2001年  上海市政府より「外籍人員子女学校」申請の指示あり
2004年  虹橋校4期校舎竣工【児童生徒数:1278名】
2005年  注冊登記上の設置者が総領事館より商工倶楽部に変更される
      児童生徒の増加に伴い虹橋・浦東 二つのキャンパスに分かれる
      中華人民共和国教育部へ「外籍人員子女学校」の申請を開始
2006年  浦東校 開校式・始業式【小学部:362名、中学部450名 計812名】
      創立20周年記念式典
2010年  浦東校2期校舎竣工【小学部:525名、中学部:548名 計1073名】
      中華人民共和国教育部より「外籍人員子女学校」の認可を取得
      文部科学省より高等部認可を取得
2011年  中華人民共和国教育部より高等部増設の認可を取得
      高等部 開校【1期生:55名】
2012年  高等部 東和校舎竣工【1期生:45名、2期生:57名】
2013年  上海市社会団体管理局より民営非企業組織登記申請」の指示あり
2014年  浦東校3期校舎竣工
      上海市社会団体管理局より民営非企業組織登記認可を取得
      高等部が在外教育施設として初めて「修学支援事業補助金」の対象となる
2015年  浦東校 10周年記念式典
2016年  創立30周年記念式典【小・中・高 児童生徒数:2423名】

(つづく)

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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