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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2018.07.17

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第61回)中国ビジネス余話

菅野 真一郎

石の森(雲南省昆明)

6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(6)

(6)中国経済の概況(その3)

 これまで(1)2015~2017年実績、(2)2017年の経済実績(総論)、(3)~(6)2017年の経済実績(個別の項目)を述べて参りました。今回もその続きで中国経済の躍進について述べたいと思います。

(7) 進む中国の「経済大国化」

 GDP大国中国も、2015年1人当たりGDPは8,141ドルで、日本の4分の1、世界76位で依然発展途上国のレベルです。
 cf.アメリカ(7位) 56,084ドル、日本(26位) 32,479ドル、インド(143位) 1,604ドル(但し2013年末で1人当たりGDP 1万ドルを超える都市は上海・北京など43都市3億958万人いるというのも特筆すべきことではあります)。

 従って中国経済は今後も発展の余地は大きいともいえます。中国進出が遅すぎることはないということもできます。  
 中国の発展はおおざっぱに言って90年代半ばから伸び始め、2001年12月のWTO(世界貿易機関―World Trade Organization)加盟以降急速に伸長しています。その足跡を辿ってみたいと思います。

2001年 中国・アセアンFTA(Free Trade Agreement―自由貿易協定)締結
      ―関税低減・撤廃、サービス・貿易の自由化を取り決め
       12月11日WTO加盟(143番目) ―台湾は2002年1月1日加盟
2002年  日中貿易1,000億ドル突破(1,016億ドル)
      ―1972年、日中国交回復時は11億ドル
2004年 貿易額 1兆ドル突破―世界第3位
2005年  中国・アセアンFTAによる関税切り下げ発効
      GDP(Gross Domestic Product―国内総生産)―世界第4位
2006年  外貨準備高 1兆ドル突破―日本を抜いて世界第1位
      日中貿易2,000億ドル突破(2,113億ドル)
2007年  貿易額 2兆ドル突破、
     GDP―世界第3位
2008年 9月15日 アメリカ発世界金融危機(リーマンショック)発生
2010年 貿易額 約3兆ドル(2兆9,728億ドル)―世界第2位
     GDP―日本を抜いて世界第2位
    日中貿易3,000億ドル突破(3,019億ドル)
2013年 貿易額 4兆1,600億ドル―アメリカを抜いて世界第1位
          外貨準備高 3兆8,200億ドル 前年末比+5,097億ドル
2013年 9月 習国家主席 中央アジア、ロシア訪問
       「シルクロード経済ベルト」構想を提唱―「一帯一路」の陸上部分
      10月 習国家主席 インドネシア、マレーシア訪問
       「21世紀海上シルクロード」構想を提唱―「一帯一路」の海上部分
      AIIB(アジアインフラ投資銀行)設立を提唱→2015年末設立
2014年 GDP―10兆ドル突破
        cf.米17兆ドル、日本4.6兆ドル、独3.9兆ドル、全世界77兆ドル
2015年 シルクロード基金(400億ドル)設立
    BRICs開発銀行設立
        上海協力機構銀行設立
    AIIB設立(57カ国、資本金1,000億ドル)
        ―2017年6月現在80か国、資本金1,500億ドル
    欧州復興開発銀行(EBRD)に加盟
    AIIBが欧州投資銀行(EIB)と業務協力協定
    IMFのSDR(特別引き出し権)に、人民元が認められる
        ―人民元の国際化加速
   (中国の経済規模拡大、貿易量拡大と共に、国際金融面での中国人民元の存在感も高まる)
2017年  5月14、15日「一帯一路」国際協力サミットフォーラム(第1回、北京)
     ―130か国首脳、関係者、70以上の国際機関、1500名参加
     ―中国は計5,400億元(8兆8,000億円)の資金拠出表明
    ①「シルクロード基金1,000億元追加
    ➁国家開発銀行、建設銀行が3,800億元融資
    ③今後3年間で一帯一路沿線発展途上国に600億元援助
    (今後隔年で国際協力サミットフォーラム開催)

  以上のように、中国経済は着実に世界経済における存在感を高めている様子がお分かりいただけたと思います。
 但し中国の政治・経済の解決すべき新たな課題も次々顕現化しており、中国経済を数量や大きさだけで論ずることが必ずしも正しくないことはもちろんです。
 2008年9月のリーマンショック時の中国政府が打ち出した4兆元(60兆円相当)の景気浮揚策の後遺症で、企業ベースの過剰債務、過剰設備、過剰生産(在庫)問題、地方政府の過剰債務問題が大きくのしかかっています(4兆元のうち中央政府の財政出動は1.8兆元で、残りは銀行融資による企業、地方政府の設備投資、インフラ建設などが大半を占めました)。
 また環境問題、急速に進む高齢化社会とその社会保障問題(年金、健康保険・医療費負担増加)、貧困対策(2020年の小康社会実現までに、毎年1000万人の農村貧困人口解消を目指す)など問題山積です。
 しかし中国はこれまでも基本的には国家の大きな課題に正面から取り組み、英知を結集して解決にあたってきたと、私は評価しています。私が勤めていた会社の経営トップが中国の国家指導者(総理、副総理、国務委員クラス)と面談する時、書記係として同席していた経験では、中国の国家指導者の問題意識が高く、その解決に向けて国を挙げて取り組んでいること、解決にあたっては関係部門のシンクタンクにテーマを与え、そのレポート内容を競わせてより良い解決策を見出そうとしていること、国家指導者自身も、我々の経営トップに宿題を出して謙虚に意見を聞こうと努力していることなどを感じ取ることができました。
  一例をあげれば、毎年1月に公表されるその年の「中国共産党1号文献」は、100名を超える関係高級官僚が1か所に集められて作成にあたっているということも聞きました。国家指導者が経営トップに出した宿題は、2~3年後の中国の政策課題であることがよくありました。日本の金融機関の貸し出し債権のリスク管理の手法、不良債権処理の経験という宿題も、その後の中国の金融機関の大問題でもありました。中国人民銀行(日本の日本銀行)総裁からの「日本の住宅金融制度」説明の宿題も、後に分かったことは、中国が商品住宅制度を検討している時期と一致していました(それまでは国有企業が職員に住宅を与えて、退職しても立ち退かないのが一般的でしたが、市場経済を進めるうえで、大きなネックになっていたわけです)。

(この項つづく)

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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