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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2018.09.18

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第63回)久しぶりの深圳 

菅野 真一郎

上海の夜景

今回は、去る8月27~31日、10年ぶりに深圳を視察した感想などを述べてみます。
深圳視察の目的は、赤いシリコンバレーと言われる深圳の最新事情を視察し、日本企業の新たな中国ビジネス戦略の方向性やチャンスを探ることにありました。

1.視察先
①深圳衛視(深圳BSテレビ)―11チャネルの地方テレビ局(うち1チャネルは全国放送)の番組収録やバーチャルスタジオ見学。本社ビル増設中。
➁OPPO-DVD,ゲーム機メーカーを経て、2011年からスマホに参入して、2017年1億1,000万台、世界4位になったOPPOの経営陣(ナンバー2以下10数名)との面談(昼食をはさんで3時間)。まさにイノベーションを地で行く経営戦略に触れることができました。
③精華大学研究生院―2001年開校大学院、副院長から、教育方針、育成人材の就職状況、今後の拡充計画などについて、意見交流。詳細は下記4-②。
④沖電気実業(深圳)有限公司―ATM、大型プリンター機械製造工場見学と、意見交流。
⑤深圳ソフトウエアパーク(軟件産業基地、深圳湾創業広場)―全体を散策し、いくつかの 創業企業の中も一部見学。
⑥前海蛇口自貿区管理委員会(深圳香港合作区管理局)―世界からファンド会社を誘致する一大新都市建設計画をヒヤリング。香港経済との一体化を目論む前線基地の様相。
⑦BYD-中国の電気自動車トップメーカーを訪問、主に展示場見学と説明者との意見交流。
⑧深圳万薬薬業有限公司―三井物産出身の平塚総経理との夕食懇談。最近の深圳の変化とこれからについて。当社はジェネリック薬品(制癌剤)製造。
⑨DJI-ドローンの世界最大手の旗艦店のショールーム見学。
⑩みずほ銀行(中国)深圳支店―最近の深圳の概況(赤いシリコンバレーの実情)のレクチャーと以下の関係機関見学。見学の後夕食、懇談。
⑪UBTECH-2012年創業の中国初のヒューマノイド・ロボットメーカー(人型ロボット)の本社での見学、説明、意見交流。当社はユニコーン企業の1社。
⑫Techtemple-別名「科技寺」と言われるベンチャー企業のアクセラレーター。起業を
目指す人に対するデスクスペース提供とアドバイスサービスの会社。
アクセラレーターは深圳市に400社。
⑬華強北とSegmaker(インキュベーター)―華強北には秋葉原の30倍の規模の電気・電子部品販売店が集積して、その中にあるインキュベーター(イノベーションと創業を目指す会社を支援する会社)を見学。
インキュベーターは深圳市に250か所。
⑭JETRO広州事務所―深圳市の概況、赤いシリコンバレーの実態説明と意見交換。

2.深圳の概況
①面積、人口
 1,996.85㎢(東京都とほぼ同じ)
 常住人口約1,252万人(2017年末速報値)-広州に次いで国内第7位。
 大半が全国各地からの移民。標準語。平均年齢32.5歳の若い街。
②行政レベル―広東省直轄市、国家副省級市。
③GDP-2017年成長率は8.8%、全国平均は6.9%。
 2017年度は約38兆円で、香港約36兆円を上回る。東京は約94兆円。
 都市別GDPは上海、北京に次いで国内第3位。
  都市別一人当たりGDPは中国第1位、第2位は広州市。
④交通網の整備
 〇広州―深圳-香港142㎞を結ぶ「広深港高鉄」は2018年開通を目指し、福田(深圳)―西九龍(香港)を14分、広州南―西九龍は40分で結ばれる。
 〇現在の深圳の地下鉄網は11路線、285㎞、2030年までに総距離585㎞を計画。

3.深圳の発展の歴史-(JETRO広州事務所資料より引用)
  第1段階 1979年~2002年-改革・開放前は人口3万人の漁村。
   労働集約型工業、加工輸出基地       
      外部からの出稼ぎ労働者(農民工)による低賃金労働力。
 第2段階 2003年~2011年
   産業のグレードアップ、付加価値向上、産業構造高度化。
    汪洋広東省党委書記(当時)は労働集約型産業、環境負荷の高い産業の他
   地域への移転を推進。
      中国の他地域に先駆けて産業構造転換に向けた動きを本格化。
      2008年の世界金融危機の外需落ち込みもその契機になり、
   深圳はその先頭に立つ。
 第3段階 2011年~現在
    イノベーション、技術開発、起業の拠点。
   「大衆創業・万衆創新」(大衆の起業とイノベーション)。
   深圳市は戦略的新興産業を選定―5G、AI、医薬、ライフサイエンス、
   ロボット、電気自動車、ウエアラブル端末、ドローンなど。
      技術開発型のベンチャー企業を育成・支援の方針。

4.視察の印象
 以上の歴史的経緯をたどって深圳は低賃金農民工による労働集約型・輸出加工基地から、産業構造の転換を図り今日の先進技術開発型のオープンイノベーション都市に脱皮しつつある理由は何なのでしょうか。以下の2点を挙げてみたいと思います。
・改革・開放初期のころからの輸出加工基地として培われたOEM企業群が製造業の技術者を育み、電子部品産業に成長・転換、深圳の先進技術開発、イノベーションを支える土台となっています。
・改革・開放の先駆者を自任する深圳市政府首脳が、教育・人材育成にエネルギーと資金を惜しまず投入しています。
 特に注目したのは、約20年前に深圳市政府が清華大学、北京大学、ハルピン工業大学と協定を結び、広大な大学城を建設し、人材供給源を確保したその先見性です。
 訪問した「清華大学深圳研究生院」は大学院大学で、広大な敷地に多くの建物があります。「人材育成」と「イノベーションの実用化」を目指しています。卒業生の進路は起業、地方政府、海外留学などで、30%は深圳市に残るそうです。教師は卒業生と北京の本校から来ています。科研工作費は2.86億元(49億円)、これを深圳市政府、国家、産業界が三分の一ずつ負担しています。
   
 視察の後半、行く先々で10月安倍総理訪中では、深圳視察が予定され、外務省の秋葉事務次官が9月初め深圳視察に来るという情報が流れていました。
 深圳の将来がどういう方向に行くのか、慎重に見極めることはもちろんですが、早い段階からイギリスやフランス政府は深圳市に事務所を開設していると聞きました。日本も同じように深圳市に事務所などを立ち上げ、経済界や教育界が深圳市や深圳の各大学院との連携や、イノベーション手法のノウハウを学ぶことを考えてもいいのではではないかと感じた次第です。
(つづく)

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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