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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2018.11.19

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第65回)中国進出の留意点(2)

菅野 真一郎

東洋の真珠タワー

 前回(第64回)から、中国進出の留意点について、所見を述べております。
 第1回は、一般的な留意事項として、進出事業部門の考え方、進出するなら早く進出することを述べました。最近知ったことですが、その業界では世界的シェア(60%)を有する日本のトップ企業の社内誌に、「1990年、独資でなければ進出しない(世界数十か所の現地会社の大半が独資)、しかし中国では独資は50%以上輸出が義務付けられている、どうしたものかと躊躇していたが、日本興業銀行から『最後のバスが出ますよ』と言われ、進出を決断した。」と記録されていることを、同社の方から聞かされました。
 小生もまごまごしていると台湾の同業者が進出してきてしまう、中国の生活水準の向上で、国内需要は大きく伸びるので、中国の規制も遅くない時期に見直しされる、それよりも早く中国に生産拠点、販売拠点を作り、足がかりを作り、人事管理や労務管理、販売促進のノウハウを習得すべき、なによりも中国ビジネスのベテランの養成を急ぐべきとの考えから積極的に行政(上海市)との交渉などのお手伝いをしました。
 中国の業界からは中国政府に対して、そもそも世界的ガリバー企業の独資進出は反対、合弁にしろ、生産数量の上限を設定しろなどの条件が出され、難交渉を強いられましたが、結果としては50%輸出義務、生産数量上限付きで独資で進出しました。その後50%輸出義務が撤廃され、中国内の需要が拡大して中国の業界も生産が拡大して日本の同社の生産上限も撤廃されるなど、現在企業活動は特に大きな問題はなくなり、あの時進出を決断してよかったと言われております。
 このような話は1990年代初頭進出をお手伝いした複数の会社、いろいろな業種の会社、大企業から中堅企業まで、折に触れて寄せられています。建設関係の機械や工具の大手企業のオーナー経営者からも『あの時進出していなければ、今の当社はない』と言われたこともあります。

3.小さく生んで大きく育てる

 中国進出の基本的心構えは「小さく生んで大きく育てる」に限るということです。これは何にでもあてはまる格言ですが、中国進出では大事な意味を持ちます。我々の経験では、中国進出は小さいプロジェクトも大きいプロジェクトも遭遇する問題は内容もタイミングも共通、違いは問題の大きさだけといっても過言ではありません。
 ある大手自動車メーカーの社長が、中国の大手自動車メーカーとの包括的業務協定調印式(北京人民大会堂)の後の記者会見で、「我が社は中国では小さく生んで大きく育てる方針で参ります」と言っておられましたが、先行して進出していた関連会社の中国事業の実情を聞くにつけ、この思いを深くしていたのではないかと思われます。最初の中国プロジェクトは経済採算のとれる最小の規模でスタートし、余裕を持って中国ビジネスのノウハウの蓄積、中国ビジネスに携わる人材の育成を図るのが賢明ではないかと思います。
 またある金融関係会社の会長からは「小さく生んで丈夫に育てる」がいいんじゃないかと言われていますが、名言だと思います。いずれにせよ最初は小さくスタートするというのは大切な心構えだと思います。
 なお、合弁の場合、前回も触れましたが、世界一の外貨準備を有していても、中国側は現金出資ではなく、土地、建物、機械等の現物出資が一般的で、出資比率に見合う評価額にするため鉛筆を舐める訳ですから、プロジェクトは大きければ大きい程中国側に有利になる道理であり、プロジェクトはついつい大規模になりがちであることに注意して頂きたいと思います。
官僚主義国家中国では、役人に限らず国有企業関係者は、点数を上げたい、そのため手掛けるプロジェクトは大きければ大きいほど評価され点数を稼げる、点数を稼げれば肩書が上がる、肩書が上がれば定年時の年金の給料に対する掛け目も上がる、もちろん肩書が上がれば月々の給料も上がる、結果として生涯暮らしが楽になるという仕組みです。
(つづく)

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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