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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2019.02.25

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第68回)中国進出の留意点(5)

菅野 真一郎

北京の街並み

4.合弁パートナーの選定(3)

⑦香港・台湾企業との共同進出は、長年の信頼関係が大前提

 言葉の問題もなく、生活習慣が共通で中国側の動きを把握しやすいということで、香港・台湾企業と一緒に中国に進出することをよく薦められます。また、例えば台湾人はやはり我々日本人よりは中国や中国人のことを熟知しており、取引条件などはとてもシビアに考えていて頼りになると言われます。確かに道理がありますが、1つ忘れてはならない大前提があります。それはパートナーとなる香港・台湾企業と長年の取引関係、信頼関係があるということです。どんな有名な人に紹介されても、初めての相手(香港、台湾企業)というのは避けていただきたいと思います。言葉に不自由しませんから、中国側とつるんで、いろいろ仕組まれるケースがあります。
 もちろん、中国政府の外資導入に係る台湾政策は“政経分離”ですから、日本企業が台湾企業と一緒に中国に進出することは、中国側はむしろ大歓迎です。台湾との経済関係をより緊密にして政治の力関係を中国側に有利にしていこうという思惑があります。
 また台湾企業や台湾人経営者は“節税”に関してはとても執念深いあるいは執着する傾向があります(必ずしも台湾企業に限ったことではありませんが)。“節税”がいつの間にか“脱税”に脱線することも多く、パートナーを組む日本企業としてはコンプライアンス上、この点特段の注意が必要です。

⑧中国人ブローカーの介在は不要

 ブローカーは決してボランティアではなく、目的は成功報酬(すなわち“お金”)ですから、詰めるべき点を詰めないで契約交渉を急ぐ(早く成功報酬を受け取りたい)、あるいはプロジェクトを大きくしたがる(成功報酬を少しでも多くしたい)のが特徴で、結局後でトラブルが多くなりがちです。
 日本でも相当の社会的地位にある華僑が、交渉促進の発言力確保のために出資して、調印後に香港の投資ファンドに売却してしまう例や、香港華僑の女性が地元政府とともに、価格は安いのですが条件の悪い土地(農業用水が通っていたり、溜池がある)を盛んに薦めてきて、よくよく調べてみると、成約したら華僑が地元政府から上海市内の別荘を1棟貰う約束になっていて、危うく難を免れたという例などがあります(農業用水や溜池の撤去について、外国人が農業委員会や関係行政当局と直接交渉するには時間とお金がかかり、決して容易なことではありません。人口大国中国は食糧安全保障の観点から、食料自給率95%を死守するため、新たな農地転用→工場用地造成は原則として禁止しておりますので、ご注意ください)。
頼んでもいないのにブローカーの様な人物が現れたら、内心喜んで、そして丁寧に謝辞することです。彼らはうまく行きそうな案件を聞きつけ、蜜に群がる蟻のように近づいてくる傾向があります。また、日本にいる中国人留学生の口利きというのも、留学生本人は真面目でも一族郎党を含めた周囲の関係者が話を複雑にし、ややこしい案件になりやすいので避けたほうが安全です。
 アメリカの多国籍企業を訪問した折、石油化学、自動車等3社で、在米華僑ブローカーの活用の有無を聞いたら、異口同音に“役に立たないことがわかっているので使わない”と言っていたのは印象的でした。どうやら、アメリカにおける華僑のロビー活動は政治の世界のことのようです。
 なお本ブログの第41回から53回まで、13回にわたり、悪徳ブローカーについて数多くの事例をご紹介しております。悪徳ブローカーは中国人や華僑系の台湾、香港の人物、日本の私立大学教師やビジネスマンなど、広範囲にわたります。中国ビジネスの難しさの反映でもあると思います。

 以上、合弁パートナー選定の留意点の一端を紹介しましたが、もし、すでに立ち上げた皆さんの事業で該当する点があれば、今後は予想されるトラブルが発生しないよう、日本からの派遣者は日常細心の注意を払うことに尽きます。もちろん、良いパートナーだけれども、中国側から派遣される責任者個人の資質により事業が左右されるケースが多いのも中国事業の特色です。責任者が交代して、その人物が自分の成績を挙げたいために、従来の慣習、取決めを無視し、独自色を出そうとしてよからぬことを考え始めるケースもよくあります。
 また、とても我慢ならない人物が派遣されて来て、長い交渉の末に別の人物に交代してもらったところ、配当を実施できるまでに運営が好転したケースもあります。日中双方ともに、派遣人材が合弁事業の成否を決めるポイントでもあります。

-つづく-

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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