株式会社リンググローバルソリューション

グループサイト

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大
  • お問い合わせ・資料請求
  • TEL:03-6867-0071
  • JAPANESE
  • ENGLISH

COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2019.08.26

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第73回)中国進出の留意点(10)

菅野 真一郎

万里の長城

6.合弁パートナーの選定(3)

(6)行政トップからの合弁パートナーの紹介は要注意!

 中国の行政のトップ(省長、副省長、市長、副市長、行政組織の主任、副主任、局長、副局長など)からの合弁パートナー紹介は、必ずしも合弁事業の最適先紹介という訳ではないので要注意です。合弁件数のノルマ達成、個人的コネ(息子や縁戚が働いている)、自分や部下の天下り先確保、地元の赤字国有企業の立て直し、テコ入れというケースも多く、行政トップの紹介だからといって気を緩めず、しっかりチェック、調査することが肝心です。

 また省や市レベルの友好訪日団、訪中団絡みでのパートナー紹介・選定は、経済合理性がおろそかにされる傾向があり、日中双方の知事、省長、市長などから急がされやすいので、当事者(事業経営者)としてはより慎重な対応が必要です。

 友好訪日団、訪中団には必ず中国や日本のテレビや新聞などのマスコミ関係者が同行するケースが多く、歓迎宴などが合弁の話題で盛り上がるとすぐに報道され引っ込みがつかなくなり易いので要注意です。

 もちろん合弁パートナーを関係行政当局に頼んで紹介してもらうというのはよくあることで、それがすべてダメという訳ではありません。紹介されたパートナー候補を慎重に納得がいくまで調べることができるかどうかがポイントです。

 友好訪中団で知事や市長が団長の場合、毎年1回の恒例行事ですから地元の政界や財界のトップも含めて大勢の方が参加します。中国側は前もって参加者名簿全員について相当詳しく調べ上げています。そのうえで歓迎宴で酔いも回ったころ合いを見計らいあたかも偶然のように日本側メンバーのある会社に的を絞って、「我々の省(市)の歴史ある大型国有企業A社が日本企業との合弁を考えているが、相応しい日本の会社をご紹介いただけませんか」と省長(市長)が切り出します。日本側団長の知事(市長)が無邪気にも「今回のメンバーのB氏はその業種では日本でも有数の老舗の社長です。これもご縁ですからBさん、合弁を検討されてはいかがでしょうか」と言い、B氏も宴会の雰囲気に水を差すわけにもいかず「そうですね、せっかく知事(市長)のお薦めですから、帰国したら社内で検討してみましょうか」ということになります。早速翌日の中国や日本の地元の新聞にやり取りの模様や知事(市長)のインタビューのコメントが報道されます。引っ込みがつかなくなるよくあるパターンです。

 日本の関西地方のある県が、知事を団長に友好関係にある中国のある省を友好訪問した折、中国側の省長から地元の電力会社との合弁を打診されました。電力事業には必須の電気関係部材の製造・販売合弁です。同行していた地元の有力国会議員(新聞社社長)が全く自社の本業とは関係ないにもかかわらず「前向きに進めたい」と合弁をかって出ました。自分の選挙に有利と判断したのかもしれません。

 ある時私は日本の通産省(当時)の中国担当部署の役席に呼び出され、一緒に当該国会議員を訪問しました。相談されたのは「この合弁を進めるために日本で自分の会社(新聞社)が数億円の製造機械を発注し、2~3カ月後に完成し買い取らなければならないが、合弁会社の交渉は2年以上も経つのに一向に進まず困っている。中国にリース会社を設立して機械を買い取り、合弁会社設立後この機械を合弁会社にリースするのをどう思うか」ということでした。そして友好訪中団に関する中国、日本の新聞報道や合弁交渉の詳細を報ずる新聞切り抜きなど沢山のファイルを見せられ「省長推奨の電力会社案件なので、必ずうまくいく」と熱弁をふるわれました。

 私は省長や知事が関与しても必ずしもうまくいくとは限らない事例がたくさんあること、すでに取り組んで2年以上たっても進んでいないこと、日本側は合弁事業の業種とは無縁で、知見もなく人材もいるようには見えないことなどを根拠に、「この話はうまくいかないかもしれません。また中国にリース会社を作るには最低資本金が2000万ドル必要で、割に合わない無駄な出費になります」と申し上げました。(後日談は省略)。

 この事例は友好訪中団がらみの危うい話であり、以前ご説明した「中国での最初の事業は、社長の目利きがきく最も得意な製品・分野で始めること」という原則にも反する話でもあります。

 行政トップからのパートナー推薦であっても、経済合理性に徹した進出方針、事業展開を堅持すること、事前調査や合弁交渉では進出目的を明確にして中国側や行政トップに対しても言うべきことはきちんと言う姿勢を堅持することが重要です。

(この項つづく)

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

このコラムニストの記事一覧に戻る

コラムトップに戻る