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COLUMN コラム

駐在員のための  中国ビジネス ー光と影ー

2020.01.15

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第77回)中国進出の留意点(14)

菅野 真一郎

瀘沽湖(ろここ)は、中国 南西部の雲貴高原にある淡水湖

10.批准権限違反のプロジェクト

 中国では外資企業進出に際しては、業種、投資規模、投資内容などにより、プロジェクト(中国語で「項目」)の批准(行政当局の許認可)についていろいろの規制があり地方政府(市や省政府)や中央政府(商務部、国家発展改革委員会、国務院)の批准を経て進出が可能となります。
 中央政府の批准を得るべき大型プロジェクトについて、地方政府は「中央政府批准はいろいろ干渉(口出し)が入り時間がかかる」と言ってプロジェクトを分割し、地方政府批准で済まそうとする傾向があります。早く外資導入の実績を積み上げて点数を稼ぎたい地方政府にとって、中央政府批准はむしろ障害と考えられました。
 例えば半導体製造では本来一つのプロジェクトを後工程と前工程に分けて投資規模を小さくして地方政府批准でスタートするとか(投資規模が小さい後工程からスタートして地方政府批准で済ませ、後でスタートする前工程は初めの後工程と合算して投資規模が膨らみ中央政府批准となるはずなのに、なぜかいずれも地方政府批准で進めている事例は多い)、プロジェクトを1期、2期に分けてそれぞれの規模を小さくして地方政府批准で済ませる事例(例えば大型製紙プロジェクトのパルプ製造と製紙を分割)があります。(製紙プロジェクトなどは排水の環境問題があり、この部分が1級上の批准を必要として、地元の市政府批准でやろうとしていても省政府や中央政府批准になるなど事情が複雑化します)。
 これらの批准権限違反プロジェクトは将来上場、合併、合弁解消などの事態が発生した時に、中央の行政機関の審査で当初の権限違反が露見すると、手続きが進まなくなる惧れがあります。
 地元や地方政府の懸念(特に時間がかかる)はもっともな面がありますが、中央政府批准になっても導入を妨害されるわけでもないので、法令や規定に定められた手続きに従って粛々と進めることが大事です。
 特に2001年12月のWTO加盟後は、16年に及ぶ加盟交渉で約束した諸々の規制緩和や投資環境改善を3年や5年の経過期間に応じて、基本的に着実に実行してきていること、30万社を優に超えた進出外資企業の投資環境改善要求にも臨機応変に対応せざるを得ないケースが増えていること、人件費高騰など中国の製造コストの比較優位性が低下する中で、外資導入水準(毎年1000億ドル以上)維持のためにも各方面の規制緩和の要求に真剣に取り組まざるを得ないこと、拡大する中国市場を狙って進出する外資企業の投資規模が大型化していることなどから、中国政府もプロジェクトの批准のスピードアップを図っている様子が見て取れます。特に2010年以降、地方政府批准の総投資基準額を引き上げて中央政府批准の範囲を絞り地方政府に認可権限を委譲するとか、中央政府も地方政府もプロジェクトの認可申請受理から認可までの期間を20営業日(延長は10営業日まで)にするなどの批准のスピードアップが図られています。
 2000年代初頭までは、1件当たり総投資額(=設備投資総額と当初5年程度の運転資金所要金額の合計)が30百万ドルを超えるプロジェクトは、原則として中央政府批准をとる必要があり、「外商投資産業指導目録」(注)の「制限項目」に該当するものは、30百万ドル以下であっても中央の関係行政当局(商務部、国家発展改革委員会など)と協議して、どのレベルの批准を取得すべきか、確認する必要がありました。また「奨励項目」であっても、総投資額が1億ドルを超える大型のプロジェクト、あるいは資金調達、原材料調達、環境対策等で国家の総合バランスの調整が必要な大型鉄鋼・製紙・化学プロジェクト等は、同様に中央の関係行政部門と協議してどのレベルの批准を取得すべきか、いかなる条件をクリアすべきか確認する必要がありました。
 しかしながら直近では、国務院の2014年10月30日付「政府認可の投資プロジェクト目録(2014年版)の発布に関する通達」を受けて、国家発展改革委員会が2014年12月27日付で「『国外投資プロジェクト(中国から外国への対外投資)認可および届け出管理弁法』および『外商投資プロジェクト(外国から中国への対内投資)認可および届け出管理弁法』の関連条項の修正に関する決定」(国家発展改革委員会令第20号)を公布して外商投資プロジェクト審査にあたっての投資総額基準を大幅に引き上げ、現在に至っています。すなわち中央政府(発展改革委員会)認可は「外商投資産業指導目録」の「奨励項目」で中国側持ち分支配・中国側相対持ち分支配の要求(例えば自動車組み立てや証券会社など)がある10億ドル以上のプロジェクトと、「制限項目」で不動産プロジェクトを除く1億ドル以上のプロジェクトの場合に限られることになりました。これ以外の10億ドル未満の「奨励項目」、1億ドル未満の「制限項目」、すべての「制限項目」の不動産プロジェクトは省級政府が認可し、これら以外の外商投資産業指導目録に記載されない「一般許可プロジェクト」は、地方政府の投資主管部門(地方政府の発展改革委員会)が届け出管理することになりました。
 以上のようなプロジェクト認可体制の改善状況から見れば、批准権限違反のプロジェクトは大幅に減少しているのではないかと思いますが、実際の中国への投資に際しては最新の法令や規定の運用状況を中央・地方の発展改革委員会や商務部門に確認して法令や規定に従って進めることが肝要と思います。
 
(注) 「外商投資産業指導目録」は1995年の公布後これまで7度に亘って改定されました。「奨励項目」「制限項目」「禁止項目」に分けて外資企業の投資プロジェクト内容が規定され、目録に記載されていないプロジェクトは「一般許可項目」として地方政府の投資主管部門に届け出すればよくなっています(以前は投資規模により中央か地方批准が必要でした)。
 なお2017年の改定版では、「制限項目」「禁止項目」及び「奨励項目」の条件付項目が外商投資参入ネガティブリストとして統合され、2018年6月にはその改定版が交付されています。
 直近では2019年6月30日付で国家発展改革委員会・商務部が「外商投資奨励産業目録(2019年版)」を公布しました。この目録には「全国外商投資奨励産業目録」と「中西部地域外商投資優勢産業目録」が含まれ、それぞれ全国範囲、中西部地域及び東北地域において外商投資を奨励する産業、分野が定められています。輸入設備の関税免除、企業所得税の減額(→15%)、工業プロジェクトで利用する土地代に関する優遇措置も定められています。
 実際の中国進出検討に際しては、この方面の専門機関である「日中投資促進機構」(TEL03-5226-0141)を訪ねてアドバイスを受けることをお勧めします(私は設立に携わり、1990年3月の設立以来2度4年半、事務局次長、理事・事務局長を務めました)。

(つづく)

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE

1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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