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COLUMN コラム

日本人ビジネスマンの見た  アメリカ

2017.10.02

「日本人ビジネスマンの見たアメリカ」40 『働き方 日米比較』

北原 敬之

マンハッタンの風景

 最近、「働き方改革」 という言葉がよく聞かれるようになりました。確かに、日本企業の「働き方」には色々な問題があり、これらを改善して働きやすい環境をつくることについては、筆者は大いに賛同しますが、現状の「働き方」を単純に批判するだけでは不十分だと思います。例えば、近年、男性社員も育児休暇を取得できる制度を導入する企業が増えているにもかかわらず、実際に育児休暇を取得する男性社員が少ないことが批判されていますが、少ない背景には、「自分が休むことで同僚や周囲の人に迷惑をかけたくない」という日本人独特の「配慮」があることも理解すべきです。「働き方改革」は、働き方のベースにある日本の企業文化や歴史的な背景も含めた総合的かつ本質的な考察に基いて、段階的・長期的に進めていくことが必要ではないでしょうか。今回のコラムでは、日本で25年,アメリカで12年仕事をしてきた筆者の経験から、日本とアメリカの「働き方」を比較してみたいと思います。日米比較から日本の「働き方改革」のヒントが見つかれば幸いです。

 筆者は多くのアメリカ人と仕事をしてきました。彼らの職種は、ビジネスマン,エンジニア,弁護士,公認会計士,研究者など多岐にわたりますが、筆者から見ると、彼らの「働き方」には下記のような共通点があるように感じます。

①よく働き、よく休む。

 筆者と一緒に仕事をしたアメリカ人は本当によく働きます。いわゆる「ハードワーカー」です。もちろん日本人もよく働きますが、「集中力」という点ではアメリカ人の方が一枚上だと思います。彼らは、ONとOFFの切り換えがはっきりしていて、ONの時は早朝から深夜までエネルギッシュに仕事をしますが、OFFの時は仕事を完璧に忘れて休みます。夏やクリスマスの時期には、2~3週間の休暇を取ってリゾート地等に出かけるのが典型的なOFFの過ごし方です。日本人は、ONとOFFの切り換えが苦手なので、1週間の休暇を取る場合でも、何となく「休むことに罪悪感を感じてしまう」ことがあります。狩りの時にエネルギーを最大限発揮することが求められる「狩猟民族」のアメリカ人と、1年中田畑をケアしなければならない「農耕民族」の日本人の、DNAの違いも原因かもしれません。「忙しくて休みが取れないんだよ」と言う日本人が多いですが、忙しいからこそ、OFFでの充電でONでの集中力を高めることが必要なのです。日本人の勤勉さは守るべき伝統ですが、同時に、「働く時はしっかり働き、休む時はしっかり休む」 アメリカの文化からも学ぶことがありそうです。

②時間の使い方が上手い。

 アメリカ人は早朝会議が好きです。みんな忙しくて定時間内ではメンバーが揃わないためです。日本であれば定時後に残業して会議ということになるのでしょうが、「ディナーは家族揃って食べるもの」という意識が強いアメリカでは、残業で帰りが遅くなるよりも、早朝に出社する方を好む人が多いのです。早朝会議は、筆者も経験がありますが、定時後に疲れた頭で会議するよりも、朝一番のすっきりした頭で会議する方がはるかに生産性が高く、効率的な時間の使い方だと思います。余談ですが、早朝会議では、朝食代わりにドーナツとコーヒーを用意するのがアメリカの定番です。得意先との会食や接待の場合、日本では、夜に料亭やレストランでというケースが多いですが、アメリカではビジネスランチが一般的です。ランチの方が、コストも安いし、時間も短く済みます。これも効率的な時間の使い方ですね。
 最近、日本では長時間残業が問題になっています。人手不足が最大の原因ですが、「上司や同僚が残業しているのに自分だけ先に帰るのは申し訳ないので」という「つきあい残業」や、「常態化で残業するのが当り前」になってしまった「ダラダラ残業」も一因と言われています。
 アメリカ人の「効率的な時間の使い方」は、日本の「働き方改革」を考える上でヒントになるでしょう。

③学びたい時に学ぶ。

 アメリカでは、大学院で勉強するために会社を休職あるいは退職するケースが多く見受けられます。ビジネススクールでMBAを取るため、MOTで技術経営を学ぶため、ロースクールで弁護士資格を取るためなどの理由です。要するに、「学びたい時に学ぶ」ということですが、それが可能なのは、「休職しても会社での昇進・昇格に不利にならない」「転職が容易なので退職に不安がない」というオープンな企業文化があるからです。
 アメリカに比べると日本はまだ閉鎖的で、会社から派遣される「企業留学制度」など一部の例外はありますが、就職した後に会社を休職して大学院に入学するケースはまだまだ少ないと思います。休職制度はあっても、病気になった社員の療養目的など限定的な制度がほとんどで、「大学院で勉強するために休職したい」と申請しても、「昇進・昇格に不利だからやめとけ」と人事部や上司に説得されるし、転職に不安があるから退職もできないということで、あきらめるパターンが多いようです。
 「働き方改革」は、法律や制度を変えれば達成できるというものではありません。「働く人の意識」を変えることも重要です。筆者はアメリカ人の「働き方」を礼賛するつもりはありませんし、国民性や企業文化の違う日本にアメリカのやり方がそのまま適用できるとも思いませんが、グローバル化が進む中で日本の「働き方改革」を進める上では、アメリカの良いところ・強いところは大いに学ぶべきだと考えます。

北原 敬之

Noriyuki Kitahara

PROFILE

京都産業大学経営学部教授。1978年早稲田大学商学部卒業、株式会社デンソー入社、デンソー・インターナショナル・アメリカ副社長、デンソー経営企画部担当部長、関東学院大学経済学部客員教授等を経て現職。主な論文に「日系自動車部品サプライヤーの競争力を再考する」「無意識を意識する~日本企業の海外拠点マネジメントにおける思考と行動」等。日本企業のグローバル化、自動車部品産業、異文化マネジメント等に関する講演多数。国際ビジネス研究学会、組織学会、多国籍企業学会、異文化経営学会、産業学会、経営行動科学学会、ビジネスモデル学会会員。

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