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COLUMN コラム

日本人ビジネスマンの見た  アメリカ

2017.11.06

「日本人ビジネスマンの見たアメリカ」41 『エリートを育てる・鍛える』

北原 敬之

ブルックリン橋(NY)

 日本では、「エリート意識が強い」や「エリート主義者」など、「エリート」という言葉をネガティブなニュアンスで使うことが多いように感じますが、本来の意味は、「エリート」を国語辞典で引くと、「社会や集団で指導的・支配的役割を受け持つ層」、「Elite」を英和辞典で引くと、「選ばれた者,えり抜きの人々,選良,精鋭,権限・影響力を持つ一群の人々」と説明されています。アメリカをはじめとする欧米先進国では、国家にも企業にも「エリートを育てる・鍛える」文化とシステムが存在していて、それによって育てられ鍛えられた「エリート」達が組織のリーダーとなり、国も企業も発展してきました。それに対して、日本では、「横並び主義」による、できるだけ「エリートを作らない」文化とシステムで、「全体の平均値が高いので強いリーダーは不要」という組織を作ることによって、国も企業も発展してきました。今回のコラムでは「エリート」という言葉について考えてみたいと思います。
筆者は、アメリカ駐在時代、政治家,連邦政府・州政府の幹部,企業のトップ,弁護士・公認会計士などの「エリート」と一緒に仕事をした経験がありますが、それぞれ職種は異なっても、彼らには下記のような共通点があるように感じました。

①優れた資質

彼らは、例外なく、アメリカのトップクラスの大学・大学院を卒業しています。彼らの中には、マイノリティや移民,貧しい家庭の出身者もいますが、優れた資質のある学生には手厚い奨学金が用意されているアメリカの教育システムの恩恵で、レベルの高い教育を受けることができたのです。最近、日本では、「高等教育の無償化」が議論されていますが、すべての大学を無償化するよりも、優れた資質の学生に手厚い奨学金を提供する方が、投資効果が高いと思います。

②勤勉なハードワーカー

彼らは早朝から深夜までよく働きます。知力だけでなく、集中力・体力もすごいですね。最近、日本では、「長時間労働は悪」という風潮が強いですが、アメリカのエリートは時間なんか気にしていません。

③健全な野心

アメリカのエリートは野心が強いです。「能力と野心は正比例する」それがアメリカ文化ですから、健全な野心を持つことは極めて自然なことだと思います。日本では、「野心」という言葉にはネガティブなイメージがあり、有名なクラーク博士の「Boys. Be ambitious.」も、「少年よ、野心的になれ」ではなく、「少年よ、大志を抱け」と訳されたほどです。

④国家(あるいは企業)を支える気概・自負心

彼らの言動からは、自分が組織(国家あるいは企業)を支えているんだという「気概」「自負心」を強く感じました。この「気概」「自負心」が、エリート達の高いモチベーションと強いリーダーシップの源泉になっていると思います。「特権意識」はいけませんが、良い意味の「エリート意識」を持つことは健全なことです。

⑤選抜→育成→鍛錬

彼らは、資質・能力によって「選抜」され、組織の中(あるいはキャリアを積む中)で「育成」され、いろいろな仕事やポジションを経験する中で「鍛錬」されています。これが、アメリカの「エリートを育てる」文化であり、システムです。そして、この「エリートを育てるシステム」には2つの前提があります。1つは、「実力主義」です。人種や出自に関係なく、資質と能力によって「選抜」されることです。「チャンスは平等」というアメリカ文化に合ったやり方ですね。また一度「選抜」されても、「育成」の段階で、能力に基づいてふるいにかけられるので、日本で見られるような「出来の悪い二世政治家や二世経営者」はこの段階で淘汰されます。2つ目は「透明性」です。エリートの「選抜・育成・鍛錬」をこっそりやるのではなく、堂々と、組織内にわかる形で実行することです。透明性を高めることで、公平・公正に行われていることが理解されます。

以上のようなアメリカの「エリートを育てる文化・システム」から、日本が学ぶべき点が5つあると思います。

①日本人の「エリート」という言葉に対するネガティブなイメージを払拭し、「エリート嫌い」「反エリート主義」の呪縛から脱却し、「エリートの育成」が国や企業の発展に有益であることを理解する。
②「横並び主義」を改めて、「高い実力・健全な野心・組織を支える気概」を持った「真のエリート」を育てる文化を醸成し、そのためのシステムを構築する。
③「実力主義」を徹底し、出自などに関係なく、資質・能力に基づいて「エリート」を選抜し、長い時間をかけて「育成・鍛錬」する。
④「人材育成は投資」という考え方を徹底し、「全員一律」でなく、ポテンシャルの高い人材に「重点投資」する。
⑤グローバル競争を勝ち抜くには、日本的な「調整型リーダー」でなく、欧米流の「統率型リーダー」の育成が必要であり、そのためには、早い段階から選抜して育て鍛える「エリート教育」が不可欠。

北原 敬之

Noriyuki Kitahara

PROFILE

京都産業大学経営学部教授。1978年早稲田大学商学部卒業、株式会社デンソー入社、デンソー・インターナショナル・アメリカ副社長、デンソー経営企画部担当部長、関東学院大学経済学部客員教授等を経て現職。主な論文に「日系自動車部品サプライヤーの競争力を再考する」「無意識を意識する~日本企業の海外拠点マネジメントにおける思考と行動」等。日本企業のグローバル化、自動車部品産業、異文化マネジメント等に関する講演多数。国際ビジネス研究学会、組織学会、多国籍企業学会、異文化経営学会、産業学会、経営行動科学学会、ビジネスモデル学会会員。

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