グローバル HR ソリューションサイト
by Link and Motivation Group

グループサイト

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大
  • お問い合わせ
  • TEL:03-6867-0071
  • JAPANESE
  • ENGLISH

COLUMN コラム

ベトナムビジネスで見た景色

2017.05.29

【ベトナムビジネスで見た景色(29)】東南アジアに向かう台湾

小川 達大

台湾経済研究院とCDIの覚書締結

 今回は、台湾について。

 台湾の新政権が掲げている経済政策の目玉として、「新南向政策 New Southern Policy」というものがあります。これは、台湾企業の東南アジア・インドへの進出を後押ししようとするものです。台湾企業はここ数年、中国本土への投資を活発にしてきましたが、その投資の行き先を南方へも振り分けるということになります。

 中国本土での製造コスト水準が上がってきたうえに、経済成長が落ち着きはじめ(とは言え、成長率は高いですが…)新たな成長の場所を求めて、東南アジア(台湾では、ASEANを「東協」と呼んでいます)・インドに向かうということです。また、新政権になってから中国本土との政治的な関係(両岸関係)が芳しくないことへの対応という側面もありますし、中国との関係を重視していた前政権に対する個性という側面もあるようです。

 実は、台湾企業の東南アジア展開(「第1次ブーム」とでも言いましょうか)は、1990年代前半にもありました。台湾企業がベトナムなどをはじめ、東南アジアに積極的に投資しました。ところが、中国人民元の大幅な切り下げ(⇒中国での製造コストの大幅ダウン)やアジア通貨危機の影響を受けて、東南アジアに対する投資は減少し、代わって中国本土への投資が活発になります。現在、台湾のエレクトロニクスメーカーなどは、中国本土に多くの工場を持ち、いわば「台湾で開発して中国本土で作る」という世界でも競争力のあるモデルを築いています。新南向政策は、その競争力のあるモデルを、これからの世界の行方を見据えながら、そしてアジア全体を射程に入れながら、再構築しようとする試みとも言えます。

 民間ベースでの素早い動きと、新南向政策の後押しがあって、既にベトナムやミャンマーなど、台湾企業の投資が活発になってきています。

 台湾は、国土が狭く人口や資源も少ないという国柄、製造場所を国外に求めざるを得ないという宿命があります。また地理的に見ても、東アジア・東南アジア経済圏のど真ん中に位置しています。こういったわけで、台湾の人々の「アジア全体を眺めて、最適解を見出そう」という視野と姿勢は、非常にユニークで、敢えて言ってしまえば極めて「自然」であるように思います。「日本という自分たちのホームグラウンドと、そのソトにあるアジア」という捉え方をしがちな日本企業/日本人とは、違ったアジアの捉え方です。

 今の時代、アジア全体を見て、最適なバリューチェーンを構築することが不可欠な時代です。台湾企業のなかには日本企業の先進的な技術に関心を持っている企業も多いようですので、「日本で技術の芽を育み、台湾で商品開発などで芽を育て、東南アジア・インドで筋肉質に作る」というリージョナル・バリューチェーンの競争力を活かしながら、世界で戦っていくということも考えなければならない時代でしょう。


 さて、そういったリージョナル・バリューチェーン構築競争の時代に対応するべく、私の所属しているコーポレイトディレクション(CDI)は、台湾経済研究院との協力の覚書を先日締結しました。台湾経済研究院は、40年以上の歴史を持つ台湾初の民間シンクタンクです。台湾経済研究院の持つ産業調査・政策立案に関するノウハウや台湾企業とのネットワークと、CDIの持つコンサルティングの経験や日本企業とのネットワークを活かして、アジア企業を支援していくことを期待しています。

小川 達大

Tatsuhiro Ogawa

PROFILE

経営戦略コンサルティング会社Corporate Directions, Inc. (CDI) Asia Business Unit Director。同ベトナム法人General Director、同シンガポール法人Vice Presidentを兼任。 日本国内での日本企業に対する経営コンサルタント経験を経て、東南アジアへ活動の拠点を移す。以降、消費財メーカー、産業材メーカー、サービス事業など様々な業種の東南アジア展開の支援を手掛けている。ASEAN域内戦略立案・実行支援、現地企業とのパートナリング(M&A、JVづくり、PMI等)支援、グローバルマネジメント構築支援など。日本企業のアジア展開支援だけでなく、アジア企業の発展支援にも取り組んでおり、アジアビジネス圏発展への貢献に尽力している。
CDI Asia Business Unit

このコラムニストの記事一覧に戻る

コラムトップに戻る