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COLUMN コラム

ベトナムビジネスで見た景色

2017.06.26

【ベトナムビジネスで見た景色(30)】中期目線の「質の高い」活動を。

小川 達大

ベトナム投資カンファレンスの様子(中央に安倍首相とフック首相)

 6月5日、ホテルニューオータニで「ベトナム投資カンファレンス」(ジェトロ、ベトナム計画投資省主催)が開催されました。グエン・スアン・フック首相の訪日に合わせて、ベトナムの現在と今後につき、フック首相自身からプレゼンテーションをいただき、その後、日系企業も交えたパネルディスカッションも行われました。安倍首相は閉会の挨拶のなかで、2度目の首相就任後の最初の訪問国がベトナムであったことや、今年3月には天皇皇后両陛下がベトナムを訪問されたことなどに触れ、日越関係の更なる強化について述べられました。フック首相に同行するベトナム企業や省関係者との交流会も開催され、日本とベトナムとの友好な関係を象徴し、そして推進するイベントでした。

 ところで、そのカンファレンスの途中、ベトナムの投資環境を紹介するビデオが流れていました。そのビデオの中で、「ベトナムでのビジネスを拡大させると答えた企業の割合は、アメリカ企業では40%程度であるのに対して、日本企業では80%であり…」という趣旨のコメントが登場しました。それゆえ日本企業にとってベトナムは魅力的な場所である、という文脈ではありましたが、私は、アメリカ企業とのギャップが印象に残りました。思うに、短期的な利益や資本効率への意識が強い欧米企業(と、一旦一括りすると)にとって、ベトナム市場/東南アジア市場は魅力が相対的に薄いのかもしれません。欧米市場とアジア市場では、顧客の志向やビジネス慣習において、違いが多い・大きい、ということはあるでしょう。また、東南アジアという市場は、所得や民族など、様々な要素による違いがあり、いわばモザイク状です。そういった違いに個別に対応していくというのは、面倒ですし、非効率なことも多いでしょう。加えて、東南アジアで活動する人々が揃って口にすることですが、「何をするにも時間がかかる」ということもポイントです。短期的な利益を意識するのであれば、経営資源を東南アジアではなく別の場所に投下した方が良い、というケースも多いのでしょう。

 一方で日本企業は、東南アジア市場に、ほんとうはフィットしやすいのではないかと、思っています。欧米と東南アジアの違い、日本と東南アジアの違いを比べてみると、日本と東南アジアの違いの方が小さいように思います。(中国や韓国と東南アジアの違い、と比べてしまうと分が悪いようにも思いますが…)モザイク状の市場に対応するためのキメ細かさも、日本企業は本質的には備えているように思います。(その力を発揮しきれていないところに、大きな課題があるということは思いますが…)事業運営において、「企業活動を続ける」「後輩にバトンを繋ぐ」というような中期目線の意識は、日本人ビジネスパーソンの心のなかにしっかりとあるように感じます。(もちろん、短期的な利益を無視しているということではありませんし、無視してはいけないですが…)というようなことで、(いくつかの重大な留保つきではありますが…)日本企業の特徴と東南アジア市場というのは、相対的には相性が良いのだろうと思うのです。東南アジアに腰を据えて会社や事業をじっくりと創っていく。そんなことができるのは、私達なんだと思います。

 安倍首相は、カンファレンスでの挨拶の中で、「『質の高い』インフラ輸出・経済協力」について、述べられました。この「質の高い」というのは、今の日本政府のアジア外交方針に頻繁に登場する言葉で、要するに、「私達は、例の『あの国』とは違いますよ」ということをアピールしているわけかと思います。外交方針から離れて、もう少し一般化して考えると、「質の高い」というのは、単に「高価である」ということよりは、「丁寧にやる」「約束を守る」ということと繋がってくるものだと思います。「丁寧にやる」「約束を守る」仕事というのは、買い手にとっては、「リスクを見積り過ぎなくて良い」「ムダな予防をしなくて良い」ということになるはずで、その仕事(プロジェクト)の経済的な価値を高めることに繋がるでしょう。さらに言えば、プロジェクトの期間が長くなればなるほど、「丁寧にやる」「約束を守る」仕事の価値は高くなるものです。東南アジアに腰を据えて会社や事業をじっくりと創っていく時には、日本企業の「丁寧で」「約束を守る」ことの価値は大きいはずです。逆に言えば、日本企業が東南アジアで根を下ろして活動していくためには、「丁寧で」「約束を守る」ことを意識しなければならないのでしょう。

 それでは、ヘンガップライ!

小川 達大

Tatsuhiro Ogawa

PROFILE

経営戦略コンサルティング会社Corporate Directions, Inc. (CDI) Asia Business Unit Director。同ベトナム法人General Director、同シンガポール法人Vice Presidentを兼任。 日本国内での日本企業に対する経営コンサルタント経験を経て、東南アジアへ活動の拠点を移す。以降、消費財メーカー、産業材メーカー、サービス事業など様々な業種の東南アジア展開の支援を手掛けている。ASEAN域内戦略立案・実行支援、現地企業とのパートナリング(M&A、JVづくり、PMI等)支援、グローバルマネジメント構築支援など。日本企業のアジア展開支援だけでなく、アジア企業の発展支援にも取り組んでおり、アジアビジネス圏発展への貢献に尽力している。
CDI Asia Business Unit

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