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COLUMN コラム

ベトナムビジネスで見た景色

2017.05.01

【ベトナムビジネスで見た景色(28)】ベトナム企業のコーポレイトガバナンス改革

小川 達大

牛乳55%、ヨーグルト85%、コンデンスミルク85%のシェアを持つビナミルク

 ベトナムを代表する企業であるビナミルクが、いわゆるコーポレイトガバナンスの体制を変更しました。

 2017年4月に開催されたビナミルクの株主総会で、コーポレイトガバナンス体制の変更が承認されました。3名の社外取締役が選任され、それぞれが監査委員会、指名委員会、報酬委員会の委員長を務めることになります。ベトナム初の委員会設置会社ということになるそうです。経営陣が株主の利益を意識した適切な意思決定をしていくこと、説明責任を果たすこと、を担保するために、社外取締役の導入などの体制改革は有効であるはずです。

 大小さまざまなベトナム企業とやり取りをしてきましたが、海外からの投資家を獲得していくことを想定すると、上場企業であったとしても、今の情報公開の量と精度では十分ではありません。一例としては、多くの場合、夢と計画の区別がついていないように日本企業や日本人からは見えてしまうことが挙げられます。新しい工場があるというふうに聞いて現地に行ってみると全くの更地だったようなこともありますし、新しい工業団地を紹介すると言われて行ってみるとイノシシを飼っている檻に案内されたこともあります。「新しい工場を建てる予定だ」という話であっても、その工場を建てるための資金の当てが無かったり、新しい工場で作ったものを売るための方針が決まっていなかったりということも、よくある話です。「今後3年で売上高を3倍にする」というような「計画(というか、宣言)」があっても、達成に向けた道筋はほとんど決まっていないという場面に、何度も会ってきました。

 そういう状況ですので、ビナミルクが先陣を切ったコーポレイトガバナンス改革は、社外のステークホルダー(と、その候補)との関係を健全なものにしていく流れを作っていくきっかけになるものと期待できます。

 しかし、ビナミルクの事例には、留意点があります。社外取締役は、ビナミルクの大株主の人材が就いています。社外取締役の独立性という観点では、疑問のある任命です。大株主であるSCIC(ベトナム国会資本投資会社)やシンガポール・マレーシアの大手飲料メーカーF&N(フレイザー&ニーヴ)の利害と、一般株主の利害が必ずしも一致するわけではないからです。SCICは39.33%、F&Nは16.35%のビナミルクの株式を保有しています。例えばF&Nは、ビナミルクが有する圧倒的な流通力を活かして、F&Nの商品を売っていくという相乗効果を狙っているのでしょう。だとすると、F&Nにも所属しているビナミルクの社外取締役は、純粋に株主全体を代表する存在として、経営陣に意見することができるでしょうか。例えば、日本では、大株主であることは、機関投資家が社外取締役の独立性を認めない理由として挙げられています。

 ただし、このことを以て、「ベトナム企業のコーポレイトガバナンスは、中身が伴っていない」と結論づけるのは適切でないでしょう。経営の透明性が改善する⇒投資家が集まる⇒更に改善する、というように、段階的に改革が進んでいくというのが現実的であろうと思います。

 また、そもそも、アメリカを中心に議論されているコーポレイトガバナンスなるものが、アジア諸国における企業/経営者と株主の関係に、そのまま当てはまるのかどうかも、吟味しなければならないことです。アジア諸国では、上場企業であっても、実質的なオーナーシップをオーナーや国が保有し続けているケースが多いです。それゆえ、「企業は、株主のモノ」とシンプルに言ってしまうことはできないでしょう。


 ベトナムなりのコーポレイトガバナンス改革に期待が高まります。今後は、国営企業を中心に大型のIPOがいくつか予定されています。ステークホルダーとの関係改善とIPOを通じて、ベトナムの株式市場が足腰強く活気を帯びていくでしょう。これは、株式投資家にとっての機会が高まるだけでなく、企業にとっても出資や提携などの機会が充実することを意味するはずです。


それでは、ヘンガップライ!

参考)Nikkei Asian Review “Vinamilk expands board, modernizes management.” (2017/4/19)

小川 達大

Tatsuhiro Ogawa

PROFILE

経営戦略コンサルティング会社Corporate Directions, Inc. (CDI) Asia Business Unit Director。同ベトナム法人General Director、同シンガポール法人Vice Presidentを兼任。 日本国内での日本企業に対する経営コンサルタント経験を経て、東南アジアへ活動の拠点を移す。以降、消費財メーカー、産業材メーカー、サービス事業など様々な業種の東南アジア展開の支援を手掛けている。ASEAN域内戦略立案・実行支援、現地企業とのパートナリング(M&A、JVづくり、PMI等)支援、グローバルマネジメント構築支援など。日本企業のアジア展開支援だけでなく、アジア企業の発展支援にも取り組んでおり、アジアビジネス圏発展への貢献に尽力している。
CDI Asia Business Unit

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