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COLUMN コラム

ベトナムビジネスで見た景色

2017.04.03

【ベトナムビジネスで見た景色(27)】タブーの構造

小川 達大

YouTubeの「不適切な」動画のアップロードに対して、ベトナム政府が管理を強めています。2017年2月、ベトナム政府は、YouTube上の17の動画を特定しました。ベトナムの歴史を歪曲したり、扇動的であったり、ポルノであったり、というのが、その理由です。また、それに併せて、それらの動画の再生に際してビナミルク、ベトナム航空、P&G、ユニリーバ、サムスン、ヤマハなど大手企業の広告が表示されるとうことを指摘しました。ベトナム政府からの要請を受けて、YouTubeは該当する動画を全て削除しました。YouTube上には、同様の動画が、ベトナム語のものだけでも数百本ほどあるそうですが…

広告主の広告が、どの動画と一緒に表示されるのか、ということは、広告エージェントが管理している事柄であり、そもそも動画と広告のマッチングは自動的・人手を介さず行われているので、「不適切な」動画と一緒に広告が表示されることと、その広告主の責任があるかということは、複雑な問題を孕んでいます。企業としては、YouTubeやFacebook上での広告は、極めて有効なツールです。みずみず手放すわけにもいきません。更に、アップロードされた国やサーバーのある国がベトナム国外であってもベトナム政府の要請が効力を発するのか、言論の自由をどう考えるか、といった問題もあります。とはいえ、政府としても、国の基盤を揺るがしかねない情報との対応は、大きな問題です。

こういった状況の中で、国有企業であるビナミルクとベトナム航空は、素早いアクションを取ります。ビナミルクは、ベトナム政府に対して、「完全に法律を遵守した状態になるまでYouTubeへの広告掲載を停止する」という書類を提出します。事態の状況と広告停止の影響を勘案すると、かなり思い切った行動のように見えます。

一方で、YouTube上での「不適切な」動画と自社の広告が一緒に表示される、という事態は、世界中で問題になっています。「不適切な」動画は、人間の性(さが)でしょうか、閲覧数が上がることも多いですので、広告が人々の眼に止まる回数を指標にすれば、「不適切な」動画は、「魅力的な」動画ということになります。しかし、「不適切な」動画と一緒に表示される広告に対するイメージは、あまり良いものではありません。それゆえ、広告を掲載する場の「量」から「質」に対する意識の高まりと、現状に対する問題意識が高まっているのです。YouTubeの親会社であるGoogleが創業以来進めている「情報の整理」という壮大な事業において、「情報の価値を評価する軸とは何なのか」という問いを投げかけてもいます。

そういった状況の中で、多国籍企業を中心に、YouTubeからの広告を取り下げる動きが出ています。テロリズムを助長する動画と広告が一緒に表示されてしまい、それによって収益を得たことに対する訴訟も起きているようです。対応として、YouTubeは、「不適切な」動画に広告が表示されないよう改善していく、という方針を掲げました。

同じYouTube上の不適切な動画と広告に関する問題ではありますが、ベトナムと欧米で起こっていることを比べてみると、問題の表出の仕方や対応策が動き出すメカニズムが違っているように見えてきます。
ベトナムでは、国家の安定を脅かす動画を排除するという文脈の中で問題提起がなされ、国有企業を中心に政府の方針に従う(というスタンスを見せる)形で対応がなされました。一方で、欧米のケースでは、ブランドイメージを毀損しかねない動画と並べられることが問題であるとされ、広告業における経済合理性(広告出稿料と広告効果の費用対効果)の中で対応が進められています。

簡略化して、今回の出来事の登場人物を、政府・企業・社会と分けるとすると、それらの関係は下記のようなイメージになるでしょうか。

20170403.jpg

体制の性格や経済発展の段階などの影響があるのだと思いますが、ベトナムの現在地を知るうえで、非常に興味深い事例だと思います。

それでは、ヘンガップライ

小川 達大

Tatsuhiro Ogawa

PROFILE

経営戦略コンサルティング会社Corporate Directions, Inc. (CDI) Asia Business Unit Director。同ベトナム法人General Director、同シンガポール法人Vice Presidentを兼任。 日本国内での日本企業に対する経営コンサルタント経験を経て、東南アジアへ活動の拠点を移す。以降、消費財メーカー、産業材メーカー、サービス事業など様々な業種の東南アジア展開の支援を手掛けている。ASEAN域内戦略立案・実行支援、現地企業とのパートナリング(M&A、JVづくり、PMI等)支援、グローバルマネジメント構築支援など。日本企業のアジア展開支援だけでなく、アジア企業の発展支援にも取り組んでおり、アジアビジネス圏発展への貢献に尽力している。
CDI Asia Business Unit

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