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COLUMN コラム

チャオプラヤー川に吹く風

2017.06.26

【チャオプラヤー川に吹く風(51)】タイ人にとっての「曜日」

齋藤 志緒理

バンコクのパヤタイ通りに掲げられたシリントーン王女の肖像と誕生曜日色の「紫色」(2015年5月、筆者撮影)

 皆さんは、ご自分が生まれた日が何曜日だったかを、ご存知でしょうか。出産が医師の手薄な日曜日で大変だった…などの特段の状況がなければ、普通は親から「あなたは何曜日生まれ」と知らされることはないでしょう。しかし、タイ人にとっては、自分が生まれた曜日は存外重要な意味を持ちます。

●曜日ごとの仏像とシンボルカラー

 タイ国の寺院を訪れると、曜日ごとに違うポーズの仏像が祀られているのに出合います。参拝者は、本堂で御本尊を拝み、さらに自分の曜日の仏像を拝みます。

 曜日ごとにシンボルとなる色も決まっており、各自、大事なイベントがある日などには、自分のカラーの服を身に付けたりします。7曜日の色分けは以下の通りです。

日曜日=赤
月曜日=黄色
火曜日=ピンク
水曜日=緑
木曜日=オレンジ
金曜日=空色
土曜日=紫

 「誕生曜日による色」の伝統がいつの時代に始まったかは定かではありませんが、タイ人の間では、(曜日ごとに守護神がおり、それぞれの神様に独自の「色」があるとする)ヒンドゥー教に由来…という見方が強いようです。

 タイの詩聖と呼ばれる「スントーンプー」(生没年:西暦1786-1855)がラーマ2世の時代に書いた作品の中には「誕生曜日の色の服を着る」という記述が出てくるそうです。ラーマ2世の治世は1809-24年ですから、約200年前には、既にタイ人の暮らしの中に「誕生曜日」の慣行があったことがうかがえます。

●国王の誕生曜日色

 2016年10月13日に崩御したラーマ9世(プーミポン前国王)の誕生曜日色は黄色でした。生前、国王の誕生日(12月5日)や、即位記念日(6月9日)などの節目の日には、前国王を敬愛する市民たちが、黄色を身にまとう姿が見られました。

 2006年の軍事クーデター以降、「赤シャツ派」vs「黄シャツ派」の対立が報じられましたが、黄シャツ派の「黄」は、前国王の誕生曜日色をシンボルカラーとしたことによります。

 サッカーのタイ国代表チームのユニフォームのカラーは通常「赤か青」ですが、黄色い特別ユニフォームで戦われた試合もあります。

 ラーマ10世となったワチラロンコーン新国王も月曜日生まれですので、国王の誕生曜日色としての黄色は、今後も継承されていくことになります。

 2015年に筆者がタイ国を訪れた際は、前国王の次女、シリントーン王女の還暦の誕生日(4月2日)が盛大に祝われた後で、街中の随所に、同王女の肖像画がシンボルカラー「紫色」と共に掲げられていました。

●シンボルカラーは、こんなところにも

 筆者が留学したチュラロンコン大学のスクールカラーはピンクでした。大学の生協では、いつでもピンク色のポロシャツやTシャツ、ピンクのロゴの入ったノートなどが沢山売られていました。

 在学当時は、なぜピンクなのかを深く考えませんでしたが、改めて調べてみますと、大学名となっているラーマ5世(チュラロンコン王)の誕生日(1853年9月20日)は火曜日でした。

 タイ国の高等教育機関の双璧と言われる、チュラロンコン大学とタマサート大学は、日本における早慶戦のような対抗試合(サッカー)を行う伝統があります。

 筆者もこのサッカー「チュラ・タマ戦」を観戦したことがありますが、会場となったスタジアムでは、観客席がチュラロンコン大学のピンク色と、タマサート大学のスクールカラー「赤と黄色のストライプ」に染め分けられ、賑やかな応援合戦が繰り広げられました。

 ちなみにタマサート大学のスクールカラー「赤と黄色」は、誰か(創立者など)の誕生曜日にまつわるものではありません。同大学のウエブサイトにはなぜこの2色に決まったかについての言及はありませんが、卒業生の友人によれば、学生は「黄色は“仏教”を意味し、赤は“血”(=国家・社会のために尽くす気概)を象徴」と理解しているとのことでした。

●誕生曜日の占い

 タイ人も占いが好きですが、日本で一般的な「血液型占い」は浸透しておらず、「誕生曜日色占い」がメジャーです。曜日による「相性判断」もあり、各曜日の相性がよいとされる曜日は、こんな具合です。

(自分の生まれた曜日)⇒(相性がよいとされる誕生曜日)
日曜日⇒火曜日
月曜日⇒土曜日
火曜日⇒木曜日
水曜日⇒月曜日
木曜日⇒火曜日
金曜日⇒月曜日
土曜日⇒水曜日

(この組み合わせは、占いの流儀によって異なるので、唯一無二というわけではありません。)

 同性、異性を問わず、親しい人ができると、相手の色が気になることもあるようで、タイ人と知り合いになると、「あなたは何曜日生まれ?」と尋ねられることがあります。昨今は、インターネットで簡単に過去のカレンダーが調べられますので、ご自分の誕生曜日を知っておいて損はないかもしれません。

 互いのシンボルカラーがわかれば、贈り物をする時など、相手の色にちなんだプレゼントを選ぶこともでき、とても喜ばれます。

 いずれにしても、日本では気にされることのない「誕生曜日」がタイでは個人的に意味をもち、国王のシンボルカラーが政治活動やスポーツのナショナルユニフォームで使われるなど、社会的にも目にする機会が多いことは、特筆すべきと思います。

齋藤 志緒理

Shiori Saito

PROFILE

津田塾大学 学芸学部 国際関係学科卒。公益財団法人 国際文化会館 企画部を経て、1992年5月~1996年8月 タイ国チュラロンコン大学文学部に留学(タイ・スタディーズ専攻修士号取得)。1997年3月~2013年6月、株式会社インテック・ジャパン(2013年4月、株式会社リンクグローバルソリューションに改称)に勤務。在職中は、海外赴任前研修のプログラム・コーディネーター、タイ語講師を務めたほか、同社WEBサイトの連載記事やメールマガジンの執筆・編集に従事。著書に『海外生活の達人たち-世界40か国の人と暮らし』(国書刊行会)、『WIN-WIN交渉術!-ユーモア英会話でピンチをチャンスに』(ガレス・モンティースとの共著:清流出版)がある。

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