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COLUMN コラム

マーライオンの眼差し

2017.07.18

マーライオンの眼差し (28) ASEAN50周年 (2)

矢野 暁(サムヤノ)

<自由貿易推進への逆風>

 戦後「自由貿易主義」「グローバリズム」を主導してきた国々が、手のひらを返したように「自国ファースト」と叫び出し、それに引っ張られるように新興国を含め、世界のあらゆるところで「内向き志向」の傾向が強まっています。そうした中で、EU(欧州連合)やNAFTA(北米自由貿易協定)など地域経済における連携・自由化を推進する枠組みも揺らいでおり、経済的実利のために妥協を厭わず、様々な違いを乗り越え結束しようとしてきた世界的潮流の一部が突如として方向転換をし、大海でぶつかり合っているといった状況と言えましょう。

 方向感の定まらぬ渦巻く風や荒波の真っ只中で迎えるASEAN50周年。この記念するべき節目は、これからASEANがどの流れに乗っていくのか、あるいは世界経済の中でどのような流れを作り出すことに寄与していくのか、言わば基本的方向性をコミットする意味合いもあります。

ASEAN50周年のオフィシャルロゴ

ASEAN50周年のオフィシャル・ロゴ


<期待と不安>

 ASEANは、少なくとも原則論としては引き続き自由貿易主義を推進し、域内の経済連携を強化しつつ、域外の国家や地域とも連携を模索していくはずです。なぜなら、ASEANが経済的連携を深めていったまさに根本的動機付けなのですが、各加盟国の経済規模は(アジアの中だけで見ても)さほどパワフルではないからです。 ASEANとして10か国が「束」になることで強力な磁場を作り出しているわけで、日本企業もその磁力に引き寄せられてきました。ASEAN経済が大きく発展した今も、それは変わりないと思います。
 また、EUとの比較でよく指摘されるASEANの特徴として、政治的な統一思想・主義や通貨統合のような難しい目標を敢えて前面に掲げずに、域内加盟国間の不干渉主義の下、まずは経済的実利を優先する柔軟で実益的な共同体である、という基本姿勢があります。この姿勢も恐らく同様であり続けるでしょう。
 しかし、共同体としての大きな方向性や基本姿勢は今後も変わらないとしても、域内加盟国は政治・社会面等で様々な由々しき問題を抱えていると同時に、加盟国の中には内向き志向が顕著になっている国々もあります。これが具体的に何を意味するかと言えば、2015年12月末に発足したASEAN経済共同体(AEC)が策定した「2025年に向けたブループリント」の実効性やスピードが、期待とは裏腹の経過を辿り、地場企業に加えて日本企業を含む外資企業が享受できるベネフィットが限定的になるかもしれないということです。


<異次元パートナーシップへ>

 ASEAN(地域・加盟国)の安定・発展・自由化は、域内の人々や企業に対してのみならず、日本や世界経済に対して大きなベネフィットをもたらしてくれます。特に製造業を中心として回っている日本の産業界にとり、世界全体におけるサプライチェーンの一大拠点となっているASEAN地域は、死活的と言ってよいほどの重要性を持ちます。


 他方、ASEAN各国にとり日本が少なくとも経済的に重要であることには変わりはないでしょうが、さりとて日本だけが重要なわけでも決してありません。日本が圧倒的な存在感を持っていた時代はとうに過ぎ去ってしまっています。
 日本がASEANと永続的かつ深化したパートーシップ関係を構築していくためには、染みついてしまった「上から目線」での対ASEAN観から脱皮し、世界へ向けた政治・経済活動における対等パートナーとして付き合っていくことの模索も必要かと考えます。

矢野 暁(サムヤノ)

Satoru Yano

PROFILE

慶應義塾大学を卒業後、東南アジア諸国における経済・社会インフラ開発に従事。その後、英国投資銀行にて、食品・飲料、ヘルスケア、衣料、小売等の分野のクロスボーダーM&Aの仲介・助言業務に携わる。ベトナム政府に対する国家開発支援アドバイザー、同国での多岐にわたるベンチャー事業の成功を経て、1999年にCrossborderをシンガポールに設立。ASEANを中心に、B2C・B2Bの事業を問わず大手日本企業や中堅企業がアジアで新規市場参入および事業拡張・改善をするために、戦略、組織、パートナーシップ、マーケティング、人材などの面で支援を行っている。また、アジア・ASEANや異文化・リーダーシップなどをテーマとする企業向けセミナーおよび社内研修の講師も務める。シンガポール経営大学(Singapore Management University: SMU)の企業研修部にて、日本企業、多国籍企業、シンガポール企業へのプロジェクト・コーチ&ファシリテーターも兼務。「アジアから日本を元気にする!」と「草の根レベルで地道にコツコツと」をモットーに、アジアを駆け巡りながら毎月の訪日も欠かさない。シンガポール永住。

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