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COLUMN コラム

マーライオンの眼差し

2017.12.04

マーライオンの眼差し (32) インター校 ① ~アジアで増加~

矢野 暁(サムヤノ)

 これから3回にわたり、インターナショナルスクール(以下、インター校)について書きます。お子さんがいる場合、海外へ家族を帯同した際に経験できる「またとない機会」の一つとして、子供を現地日本人学校ではなく敢えてインター校へ通わせる、という選択肢があります。もちろん費用はべらぼうに高く(日本の大部分の企業はインター校へ通わせる費用を負担しないのが実情)、教育の中身に関して優劣をつけるのは親の価値観によって異なりますが(どの国の現地日本人学校も大変立派な教育をしていると思います)、日本にいる時には殆どあり得ない選択肢が手の届くところに、目の前に突如として現れるわけです。
 まず一回目はアジアでのインター校増加の傾向を概観、二回目はシンガポールのインター校事情について、そして三回目はインター校と日本人についての考察を中心に、という流れとする予定です。


<インター校って?>

 インター校って、どういう学校のことを言うのでしょう? 国際的な学校、英語で授業をする学校、外国人が多い学校・・・ 日本で言えば、英語などの日本語以外の外国語で授業をする学校のことでしょうか? シンガポールであれば、日本人学校もインター校でしょうか? そのような定義もあるようですが、各国の法律・教育制度とも関連して様々な形態があり、定義は実はあやふやです。「インター校です」と宣言・宣伝しているところがインター校、と言えないこともありません。(実際はそうでもないのですが…)
 一般的な認識としては、まず言語は英語を使用していて(大部分は英米のシステムが土台になっており)、且つ多様な国籍・民族の子供たちが通っている、通うことのできる学校のことを指すと言って差し支えないと思います。もっと言うと、「インターナショナル」を強く意識して、積極的に多民族の子供を受け入れようという意図を持っている学校が、真のインター校と言えるでしょう。「マルチナショナル校」と言い換えてもいいかもしれませんね。特に、世界的に普及しているインターナショナル・バカロレア(IB)プログラムを導入している学校は、よりインターナショナル性が高いと客観的に認められる傾向が強くなっています。(但し、IB校だから積極的に国際性を追求しているかというと、そうとも限りません。)
 したがって、例えば「アメリカンスクール」でも基本的にアメリカ人が大部分で、アメリカの学習指導要領にのみ依拠しているような学校は、国際色が薄いと言えます。英国系なども同様ですね。学校によって随分とカラーは異なります。当たり前ですが、英語=国際、欧米・西洋人(教育)=国際、などということは決してないわけです。また、各国にある日本人学校なども、インター校の範疇には入らない、というのが私の理解です。


<増加するインター校>

 定義にファジーな部分は残りますが、国際性を備えたインター校の数は世界的に増加傾向にあります。やや古いデータですが、私の会社が2015年に調査した際の数値によりますと、2010年から2014年の短い期間にインター校数が約3倍へと急増しています。この傾向は現在も続いていますし、当分は続く見込みです。しかも、インター校の半数以上は経済成長が著しいアジア・中東地域にあり、ASEANだけに限定しますと、世界の10%が集中しています。ごく最近では、ミャンマーのような新興国でもインター校花盛りです。
 急増の要因は色々あり、複合的に絡み合っています。国によりインター校に関する規制が異なるため一概には言えませんが、大まかには需給面ならびに現地・外国人の観点から以下のように要因を整理できるでしょう。


<需要サイド>

現地子女増加の要因(国によっては現地子女の入学が制限されています)

1)経済成長と所得向上(中間層および富裕層の増加)
2)域内における国際性の高まり(意識、ニーズ、アクセス等々)
3)国内公立学校の教育水準の低さ(シンガポールなどは例外ですが)

外国人子女増加の要因

4)外国企業によるアジア投資・事業の増加に伴う外国人家族の増加(外国人子女の増加)
5)周辺諸国の富裕層子女の流入(近隣国からの子女の増加)

<供給サイド>

1)国家政策: 外資規制・私立校設立規制の緩和策、或いは私立・インター校設立への積極的奨励策
2)収益面での魅力:安定して高収益が望める「ビジネス」との認識が投資側に強い

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矢野 暁(サムヤノ)

Satoru Yano

PROFILE

慶應義塾大学を卒業後、東南アジア諸国における経済・社会インフラ開発に従事。その後、英国投資銀行にて、食品・飲料、ヘルスケア、衣料、小売等の分野のクロスボーダーM&Aの仲介・助言業務に携わる。ベトナム政府に対する国家開発支援アドバイザー、同国での多岐にわたるベンチャー事業の成功を経て、1999年にCrossborderをシンガポールに設立。ASEANを中心に、B2C・B2Bの事業を問わず大手日本企業や中堅企業がアジアで新規市場参入および事業拡張・改善をするために、戦略、組織、パートナーシップ、マーケティング、人材などの面で支援を行っている。また、アジア・ASEANや異文化・リーダーシップなどをテーマとする企業向けセミナーおよび社内研修の講師も務める。シンガポール経営大学(Singapore Management University: SMU)の企業研修部にて、日本企業、多国籍企業、シンガポール企業へのプロジェクト・コーチ&ファシリテーターも兼務。「アジアから日本を元気にする!」と「草の根レベルで地道にコツコツと」をモットーに、アジアを駆け巡りながら毎月の訪日も欠かさない。シンガポール永住。

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