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COLUMN コラム

マーライオンの眼差し

2018.07.17

マーライオンの眼差し(37)駐在員費用が著しく低下?

矢野 暁(サムヤノ)

<最近の調査結果では・・・>

 海外の就業条件などに関して情報提供を行う国際的人材調査会社ECA International(以下、「ECA」)が毎年実施している調査の一つに、「MyExpatriate Market Pay Survey」というのがあります。この調査では、企業が海外へ従業員を派遣する、或いは海外で外国人従業員を雇用する場合に、①現金給与、②ベネフィット(住宅、インター校、車など)、③税金、から構成される費用の総計(「パッケージ費用」)を割り出し、主要国間で比較しています。
 2018年5月に公表された直近の調査結果によると、海外からシンガポールに人材を派遣する年間費用(或いはシンガポールにて外国人を雇用する年間費用)が、前年度調査と比較して12,000米ドルも低下したとのことです。
 すなわち2016年は235,545ドル(約2,590万円)だったのが、2017年には223,095ドル(約2,450万円)となり、アジアの上位10位の中にランクされていません。ECAはこの調査結果に関して、「一年前と比べてシンガポールで外国人を雇用する費用はアジアの中で最も著しく低下した」と評しています。
 因みにアジアで最も費用が掛かるのは日本(356,244ドル)で、次いでインド、中国、香港、豪州…と続き、アジアで最も費用が安いのはマレーシアの約15万米ドル(シンガポールの3分の2)となっています。調査の精度は定かではありませんが、世界的に広く参考にされているのは確かです。

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<費用低下の要因>

 ECAの分析によれば、シンガポールでの外国人材関連費用が低下しているのは、給与水準とベネフィットの両方の低下を反映しているとのことです。具体的には、比較的低い所得水準の国から人材を以前よりも積極的に雇用したり、またシンガポールでの雇用・居住の継続を強く希望する外国人に対して給与水準を抑制したり駐在用の各種ベネフィットを供与しなかったりする傾向が、最近強くなっているようです。
 日本の駐在員の大部分は高度経済成長期の頃と異なり、海外に駐在したからと言って物凄く格別なパッケージを享受するようなことはもはや殆どありません。一方で周りの欧米人を見ていると、馬鹿でかい屋敷やペントハウスに住み、2~3人の子供を高額なインター校に入れ、その他にも至れり尽くせりみたいな好待遇を受けている駐在員家族が結構いるものです。
 ですがここ数年、英国人などと話をしていると、条件が悪くなっても本国に帰りたくない、シンガポールに出来る限り長く残りたい、といった意見が多くなっている気がします。「しがみついてでもシンガポールから離れたくない」という印象すら受けることがあり、永住権や国籍を申請している欧米人も後を絶ちません。(但し、取得のハードルは以前よりもずっと高くなっており、容易には取得できませんが…)


<高くてもやっぱり住み続けたい>
 
 シンガポールの生活費が世界でも最高水準なのは変わらず、そういう意味では富裕層を除いては決して住みやすい国・都市ではないようにも思う訳ですが、実際のところは、シンガポールで働きたい、住みたいという外国人は、新興国・途上国からのみならず、先進国からも依然として多いようです。
そうなると、総じて雇用者側(買手側)の市場となりうるのかもしれません。優秀な外国人人材を従前よりは安価なパッケージで雇用することが可能となっているのでしょう。こうしたことが、ECAの調査結果にも反映されているものと思われます。


   

矢野 暁(サムヤノ)

Satoru Yano

PROFILE

慶應義塾大学を卒業後、東南アジア諸国における経済・社会インフラ開発に従事。その後、英国投資銀行にて、食品・飲料、ヘルスケア、衣料、小売等の分野のクロスボーダーM&Aの仲介・助言業務に携わる。ベトナム政府に対する国家開発支援アドバイザー、同国での多岐にわたるベンチャー事業の成功を経て、1999年にCrossborderをシンガポールに設立。ASEANを中心に、B2C・B2Bの事業を問わず大手日本企業や中堅企業がアジアで新規市場参入および事業拡張・改善をするために、戦略、組織、パートナーシップ、マーケティング、人材などの面で支援を行っている。また、アジア・ASEANや異文化・リーダーシップなどをテーマとする企業向けセミナーおよび社内研修の講師も務める。シンガポール経営大学(Singapore Management University: SMU)の企業研修部にて、日本企業、多国籍企業、シンガポール企業へのプロジェクト・コーチ&ファシリテーターも兼務。「アジアから日本を元気にする!」と「草の根レベルで地道にコツコツと」をモットーに、アジアを駆け巡りながら毎月の訪日も欠かさない。シンガポール永住。

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