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COLUMN コラム

悠久の国インドへの挑戦

2016.01.18

「悠久の国インドへの挑戦」28 労務問題 そのI

藤崎 照夫

カルナータカ州(インドの南西部)海岸

読者の皆様新年明けましておめでとうございます。今年も引き続きインドのコラムを担当して参りますのでよろしくお願い申し上げます。

2014年に国際協力銀行が実施したアジア主要国の「各国への進出時に直面する課題」という資料がありますが、この中に記載されているインドの主たる課題は以下の通りです。(回答は複数回答方式)

(1)インフラが未整備   51.6%
(2)法制の運用が未整備  35.1%
(3)労務問題       24.5%

私は時々インドへ赴任する方に対して「赴任前研修」の講師を務めることがありますがそのほとんどの方が上記の(3)の労務問題に高い関心を示されます。
上記の(1)と(2)は私企業として個別に対応出来る問題ではありませんが、労務問題は個々の企業で対応しなければならない問題なので駐在される方の関心が高いのではないかと思います。この労務問題については、色々とお話しすることがありますので、数回に分けて書かせて頂く予定ですのでご理解よろしくお願い致します。

先ず私の実体験から話を始めて行きたいと思います。私はインドに2回駐在したことはこれまでにも書きましたが、これは最初の駐在の時の話です。私の最初の駐在は二輪車の製造販売会社でしたが、この会社は私が赴任する2年ほど前に組合問題が起きてストライキが発生した経験があります。その時は私は本社で担当課長をしていたのでそのストライキの内容は良く理解していました。

その会社は対等合弁の会社でしたが前任の日本人駐在責任者との業務引次ぎの際前任者は「藤崎さん、あなたも良く知っているようにインドでは組合問題は麻疹(はしか)みたいなもので誰でも1回は罹るけどこの会社はもう既に1回罹っているから免疫があり2回は罹らないよ」と言って日本へ帰国しました。ところが残念ながら、彼が帰国して10日も経たないうちに2回目の麻疹にかかってしまったのです。それは私が赴任して僅か3週間目でした。

会社は首都のデリーにある本社とそこから車で約2時間ほどの工場に分かれていましたが工場の周りには幾つかの主要部品メーカーがありました。
その部品メーカーの内の一社が賃金問題に端を発してストライキに入り、それが我が社にも飛び火した訳ですが、先ず工場の生産ラインで「スローダウン」という生産のスピードををわざとゆっくりして生産台数を目標通り達成しないという方法から始まりました。次の段階は櫛の歯が抜けるように生産ラインの従業員がボイコットに入りました。そしてかなりの従業員が会社へ出社しないようになり、会社側は工場の門を閉めて所謂「ロックアウト」となりました。

会社は、偶発的な暴力行為が発生するリスクも考えて、工場の敷地内に沢山のテントを張って警察官数十名に警護して貰うことにしました。これからまだまだ話は続きますがこの先は次回に譲りたいと思います。

藤崎 照夫

Teruo Fujisaki

PROFILE
早稲田大学商学部卒。1972年、本田技研工業(株)入社後、海外新興国事業に長年従事。インドでは、二輪最大手「Hero Honda」社長、四輪車製造販売合弁会社「Honda Siel Cars India」初代社長として現地法人トップを通算10年務める。その後、台湾の四輪製造販売会社「Honda Taiwan」の初代社長、会長を務めた後2006年同社退職。現在はサンアンドサンズ社、ネクスト・マーケット・リサーチ社等の顧問として活躍インド、アジア事情に幅広く精通している。

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