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COLUMN コラム

駐在員のための中国ビジネス ー光と影ー

2016.04.18

駐在員のための「中国ビジネス―光と影―」(第33回)役員訪中成功のために―現地駐在員の対応の心得(その1)

菅野 真一郎

四川省・鹿谷湖のリグビー島

本ブログ第8回「本社役員の定例訪中は必須」で、本社役員の定例訪中が重要なこと、その際現地中国人社員や幹部との懇談、会食等を日本からの派遣社員とのそれに優先して欲しいことなどを述べました。
今回は本社の会長・社長或いはそれに準ずる役員が初めて中国を訪問する際に現地駐在員として対応する際の留意事項について述べてみたいと思います。
最近の中国の変貌も織り込みながら、以下は建築設計関係の某大手企業の社長が将来の連携を視野に、先ず研修生の相互派遣を行っている上海市の同業会社を訪問する実際のケースに即してご説明させていただきます。社長にとって中国訪問は初めての経験です。

(1)訪中の意義

①百聞は一見に如かず―“百聞不如一見”

今やGDP世界第2位の経済大国とはいえ、何と言っても中国は社会主義、全体主義、官僚主義国家で、体制、制度、諸々の習慣などが日本とは大きく異なる国です。新聞を開けば、中国関係の記事が無い日は無いくらい、我々日本人にも馴染みの深い国ではありますが、活字や映像だけでは表面的な部分しか把握出来ません。

人口が日本の十倍といわれてもそれがどの位の量なのか実感出来ません。地方の人が上海に来れば必ず買い物や食事で訪れる上海一の繁華街の南京路(南京東路と南京西路)を歩いてみれば、真直ぐに歩けないくらいの人込み、片側2車線の車道の1車線を歩道に変更している程の混雑振りを見れば、人の多さが実感できます。

中国人の食に対する貪欲さを「机以外の四つ足は全て食べる、飛行機以外の空を飛ぶものは全て食べる」と表現することがあります。夕方も5時半を過ぎると何百席ものレストランがあっという間に人で埋め尽くされる光景を見れば合点がいきます。
2003年SARS騒動の時はさすがに町中のレストランは閑古鳥が鳴いて、従業員は相当数解雇されました。安全宣言が出されるや否や、皆が町のレストランに繰り出し、たちまち大盛況。ところが従業員の再雇用や諸準備が追い付かず、注文した料理が揃うまで一時間近く待たされる状況が長期間に亘って続きました。我々外国人はいらいらをつのらせ何度か料理を催促します。中国人は家族や仲間との会話を楽しんで、文句を言う人はいません。中国人の食に対する並々ならぬ執着心を肌で感じたのを憶えています。

中国現地法人の日本人責任者から上がってくるレポートの内容も、言葉では表現しきれない部分が沢山あり、現地に出向いて見たり聞いたりして初めて実感出来ることが少なくありません。正に百聞は一見に如かずです。

②年1~2回の“定例訪中”

ⅰ“定点観測”

経営トップの方々には年1~2回は中国を訪問していただき、中国のダイナミックで早い変化を肌で実感していただきたいと思います。私はこれを“定点観測”と言っております。中国事業に関する経営判断は、これから10年後、15年後に中国がどういうふうに変化しているかという予測の上に立てられるべきだと思います。
そのためには、定例訪中による定点観測で、日本の常識では考えられない中国の変化とそのスピード、市場規模の大きさなどを自分の眼で絶えず確かめ、認識を深める努力が必要だと思います。

1980年代の早くから積極的に中国展開している有名なカメラとOA機器メーカーの社長が、ある時3年振りに中国を訪問して「衝撃を受けた」と語ったことが、日本経済新聞のコラムで紹介されたことがあります。同じころ、地方の老舗商社の社長が「3年振りに中国を視察した創業者の父(会長)から、『ショックを受けた。すぐに中国を見て来い』と言われてやって来ました」と言って上海に来られ、1週間で上海、北京、大連を視察して帰国された例もあります。

また中国に関する評論・レポートは多数ありますが、その切り口や内容は十人十色、人によって全て異なると言っても過言ではありません。それらの評論・レポートを評価する自分なりの中国観が必要になります。この観点からも定例訪中により中国社会や中国人に対する理解を深めることが重要です。
世の中は人間の営みですから、当事者同士の直接交流によって相互理解、相互信頼が深まる事は論を俟たないと思います。定例訪中で、パートナー(或いはパートナー候補)や事業を起こす地元の政府との幅広い交流を通じて商機を見出す、商機を拡大する心構えが大切だと思います。

ⅱトップ交流―民間

どんな人物と交流するか。
例えば、合弁や貿易取引などのビジネスパートナーのトップ――中国の公司の法定代表者は董事長(日本の会長)――ですから、最終的には董事長との面談は不可欠ですが、将来の後継者はどこに居るか分りませんので、結果的に無駄になっても出来る限り幅広い幹部との交流をおすすめします。
もし相手が集団公司傘下の公司であれば、親会社である集団公司のトップとの交流も大事になってきます。董事長や総経理(日本の社長)は実務方面のトップであり、社会主義中国では公司の実質No.1は共産党委員会の書記ですから(董事長や総経理は党委員会の副書記等を兼務しているケースが多い)、最終的には公司や集団公司の党委員会書記との交流が出来るようになれば今後の連携がスムーズに進む可能性が高まります。
通常は党組織のトップが外国人と交流することは極めて稀なことと言われております。足繁く通い交流を深めることが肝要です。この点華僑系の人々は比較的容易に党組織のトップとも交流が広がり易い傾向にあります。言葉が通じるということもありますが、やはり“血は水よりも濃い”ということだと思います。
但し最近は、党書記が公司や集団公司の董事長を兼務するケースも増えております。

(つづく)

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE
1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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