グローバル HR ソリューションサイト
by Link and Motivation Group

グループサイト

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大
  • お問い合わせ
  • TEL:03-6779-9420
  • JAPANESE
  • ENGLISH

COLUMN コラム

アジア最後のフロンティア 激動するミャンマー

2015.08.10

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(15)『ミャンマーの現代史(3) 民政移管の実現から2015年総選挙へ』

宍戸 徳雄

テインセイン大統領、アウンサンスーチー女史 初会談

2011年3月、SPDC(国家平和発展評議会)は解散し、2008年ミャンマー連邦共和国憲法下で初の大統領となるテインセイン政権が発足した。テインセインは元軍人であるが、民政移管を実現した形での文民政権であり、議会において一定の軍の影響力(4分の1の固定議席)があるものの、ミャンマーにおいて名実ともに初の民主政権が発足することとなった。

テインセイン大統領は、就任後、矢継ぎ早に民主化政策を実施。軍事政権下での政治犯の恩赦による釈放を段階的に実施した。以後、言論の自由や集会の自由、メディア法の制定など、表現の自由にかかわる基本的人権実現の為の政策に果敢に取り組むこととなる。また、改正政党登録法により、NLDが政党復帰を果たすこととなった。

2011年12月には、アメリカのクリントン国務長官が国務長官としては57年ぶりにミャンマーを電撃訪問。テインセイン大統領、アウンサンスーチー女史と会談した。テインセイン政権による民主化路線の実現の為にアメリカ政府が後押しすることを約束、ミャンマーの国際社会への復帰への期待がいっきに高まった。そして、2012年4月の下院の補欠選挙において、NLDが45議席中43議席を獲得して圧勝、アウンサンスーチー女史も当選。民主国家としての適正な手続きの履践が国際社会の評価を受けることとなった。

このように、テインセイン政権下の着実な民主化の成果が各所に現れる中、7月にアメリカがミャンマーに対する経済金融制裁の一部解除を内容とする大統領令を発表。オバマ大統領は、現職のアメリカ大統領としては初のミャンマー訪問を実現させ、1997年以来続いてきたアメリカの経済金融制裁が、ここで実質的にほぼ解除されることとなった。この動きに追随する形で、EUも経済制裁を解除。ミャンマーへの外国からの投資環境の最低条件が、ここで整うに至ったと言える。

国際社会に復帰を果たしたミャンマーは、2013年SEAGAME(東南アジア競技大会)を首都ネピドーにて開催。民政移管後の改革の成果を国際社会に対してアピールする機会となった。この間、テインセイン政権は、2度の内閣改造を実施し、汚職大臣を追放、政権のクリーンさもアピール。また、全ての政治犯に対する恩赦も発表し、着実に民主化の成果を国際社会に呈示、国家再建のための国際支援を次々に取り付けることに成功する。2014年には、ミャンマーはASEAN議長国就任、みごと議長国としての役割を果たした。

民政移管後のテインセイン政権が実施してきた民主化・経済改革の成果を国際社会に示すことには成功したと言えるが、他方で、その成果の果実は、ミャンマー国民に幅広く行き届いていない現状がある。この現状に対する審判が下るのが、2015年の総選挙である。民主化後、初の本格的な総選挙と言える。NLDが総選挙前の憲法改正を訴えて、選挙のボイコットも辞さないなど、選挙情勢は流動的であるが、公正透明な手続き下、NLDも含めた全政党の参加を実現する形で、全国民による民主化後のミャンマーへの評価が行われることが期待される。民主化の成果が都市部に集中し、農村部と都市部の経済格差や、既得権益と非既得権益の経済格差が顕著になっており、その投票動向は予想しにくい情勢にあると言われている。

2015年の総選挙で、ミャンマーの進むべき将来を、ミャンマー国民自身が選択し、その多数の意思に基づき、民主化の果実が広く行き渡る経済社会が実現されることを期待したい。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE
株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

このコラムニストの記事一覧に戻る

コラムトップに戻る