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COLUMN コラム

アジア最後のフロンティア 激動するミャンマー

2015.10.05

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(17) 『ミャンマーにおける自然災害(サイクロン、洪水、地震)』

宍戸 徳雄

洪水の様子を伝える地元新聞各紙

今年7月中旬から8月上旬にかけて降った季節風の影響による記録的な豪雨により、ミャンマーはここ50年で最悪の洪水被害が発生しました。この豪雨と重なる形で、ベンガル湾で発生したサイクロンによる影響も事態を悪化させる原因となりました。

被害状況としては、ミャンマーの14管区および州のうち、12管区および州において、洪水被害が発生しました。中でも最も深刻な被害を受けた地域は、ミャンマーの西北部のラカイン州、チン州、ザガイン管区、マグウェ管区の4つの地域でした。河川の水位が著しく上昇、河川が氾濫し、国連の発表では、約6千戸の家屋が崩壊し、40万ヘクタールの農地が水没しました。作物への影響は甚大だという。
25万人以上の人が被災し、70名近くの死傷者が出ました。この洪水により、家屋だけでなく、道路、橋などの交通網も被害を受け、支援物資を届けるライフラインにも大きな支障が生じました。日本政府をはじめ世界各国から緊急支援物資が届けられました。

ミャンマーにおける自然災害と言えば、サイクロン「ナルギス」が有名である。ナルギスは、2008年5月、ベンガル湾で発生し、ミャンマー西部のお米の産地であるエヤワディデルタ地域に上陸。豪雨による洪水と強風による被害は甚大で、死傷者10万人以上、行方不明者20万人以上と過去最悪の災害となった。エヤワディ管区では、150万人以上の人が家屋を失った。エヤワディデルタ地域は、ミャンマー全体の米の産出量の70%程度を占めるミャンマーにおけるコメ生産の中心地である。このエヤワディデルタを襲ったナルギスによる農業被害の傷跡は深刻なものとなった。
このような被害状況の中、ナルギス発生の1週間後、当時の軍事政権は、新憲法草案についての国民投票を予定通り実施するなどして国際社会から非難を浴びたことでも有名である。当時、国際社会と対立関係にあった軍事政権は、海外からの緊急支援物資の一部受入れ拒否や遅延受入れなど、その対応は大きな国際問題となった。

歴史的に、ベンガル湾で発生するサイクロン(年5回程度)は、ミャンマーには上陸することは少ないと言われており(バングラディッシュを通過することが多い)、ナルギス発生の際、それに対する備えが不十分であったとの指摘がなされた。政府による災害予報や避難指示なども不十分で、被害が深刻なものとなった。ミャンマー政府はナルギスの経験を踏まえ、その後国家災害防止行動計画を策定した。

地震災害については、ミャンマーの中央部を横断するザガイン活断層地域(ミャンマー北西部)における地震が多発している。ミャンマーでは、建物などの耐震対策が不十分であり、地震多発地域における耐震基準などを定めた法規制なども検討されはじめている。過去、ヤンゴンにおいては、それほど大きな地震は生じていないが、ひとたび大型の地震がヤンゴンで発生すれば、ダウンタウンを中心として、耐震構造でない建物密集エリアにおける被害は甚大なものになると予想されている。建築法規の整備に併せて、早期の地震防災対策の策定と実施が必要である。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE
株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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