グローバル HR ソリューションサイト
by Link and Motivation Group

グループサイト

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大
  • お問い合わせ
  • TEL:03-6779-9420
  • JAPANESE
  • ENGLISH

COLUMN コラム

アジア最後のフロンティア 激動するミャンマー

2017.01.30

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(34)『新ミャンマー投資法の枠組み その4 現地労働者の雇用義務について』

宍戸 徳雄

現地縫製工場で働くミャンマー人労働者

前回は、新ミャンマー投資法が規定する土地使用権の取り扱いの変更について解説しました。今回は新投資法の枠組みの解説としては最終回となりますが、現地労働者の雇用義務の取り扱いの変更点について説明したいと思います。

尚、現コラム執筆段階(2017年1月)では、新投資法は施行されていない状況ですが、今月13日に新ミャンマー投資法施行規則の一部も公表され、法施行のステップが着々と踏まれています。今後随時発布されるであろうMIC通達と併せて目が離せない状況です。

さて、外国企業の現地労働者雇用義務について説明しましょう。

旧外国投資法上の現地労働者の雇用義務規定の建付けは、「熟練した技術を要する事業活動」と、「熟練した技術を要しない事業活動」を区別した上で、それぞれに対して雇用義務の内容を規定していました。具体的に、旧外国投資法は、熟練した技術を要する事業活動を行う外国企業については、事業の開始時点より最初の2年間は25%以上の割合で現地のミャンマー人熟練労働者を雇用する義務を規定していました。同様に、4年目までは50%以上の割合で、そしてそれ以降は75%以上の割合で現地のミャンマー人熟練労働者を雇用する義務を規定していました。

導入当初は、産業政策上、並びに労働者育成政策上の観点から、右のような熟練労働者の雇用義務を一定の割合で課すことは、他のアジア諸国においても見られることから、ミャンマーにおいても実効性を有するかとその運用実態を観察していました。しかし、筆者が民政移管後の現地の雇用実態を見てきた限り、ミャンマーの労働市場において外国企業が「熟練」と評価できる程度の熟練労働者を確保すること自体が難しく、その上、上述のような割合での雇用義務規定のハードルをクリアすることは、実際的にはほぼ不可能な状況であったと思います。

そのような中、新投資法では、これらの旧投資法が規定していた熟練労働者の雇用義務規定は廃止されることとなりました。上述の通り、現実的なミャンマーの熟練労働者市場の状況を斟酌すれば、旧法の規定内容は形骸化していたことから、新法で同義務が廃止されたことは評価されます。

他方で、「熟練した技術を要しない事業活動」について、旧投資法はミャンマー人のみの雇用義務を規定していました。これは産業政策上のポリシーとして規定した内容でしたが、新投資法上も同様の雇用義務規定を維持しています。したがって、非熟練労働者については、引き続き、外国企業は現地のミャンマー人のみを雇用する義務があることとなります。

以上が、外国企業の現地労働者の雇用義務規定の内容となります。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE
株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

このコラムニストの記事一覧に戻る

コラムトップに戻る