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COLUMN コラム

名作にみる美しい英語

2020.07.13

名作にみる美しい英語(166)

原島 一男

“Why do so many Japanese wear those face masks?” asked my friend Trevor.
“They are doctors and nurses. In Japan they have to wear them until they get home,” I answered.
 (from “How to Japan” by Colin Joyce)

 「なぜこんなに多くの日本人はマスクをしているの?」友人のトレヴァーが尋ねた。
 「それは医者と看護師たちだよ。日本では彼らは自宅に帰るまでマスクをしなければいけないんだ」
と私はそう応えた。(コリン・ジョイス作「『ニッポン社会』入門」)

 小説や映画などの名作から選んだ美しい英語を紹介する連載。
 そのフレーズが生まれた時代や背景を色濃く伝え、使った人の気持ちを具体的に表します。
 それをじっくり観察することで、あなたの今の英語を鍛えあげましょう。
 言うまでもなく、一つのフレーズだけでは、その作品の全貌をつかむことはできません。
 しかし、それが、あなたの感性を刺激することもあるかもしれません。

“Why do so many Japanese wear those face masks?” asked my friend Trevor.
“They are doctors and nurses. In Japan they have to wear them until they get home,” I answered.
“Why do they play those little jingles on the platform?”
“To cheer people up. Stops them from jumping onto the tracks,” a helpful voice chips in.
  Why do the announcement on the train go on so long? What are they saying? asks Trevor.
“He’s reading out the news for passengers. Often it’s too crowded to open up your newspaper.” 
 (from “How to Japan” by Colin Joyce)

 「なぜこんなに多くの日本人はマスクをしているの?」友人のトレヴァーが尋ねた。
 「それは医者と看護師たちだよ。日本では彼らは自宅に帰るまでマスクをしなければいけないんだ」
と私はそう応えた。
 「駅のホームであの華やかな音楽を流しているのは何故なんだ?」
 「それは人々をチアアップして、ホームから飛び降り自殺を防ぐためだ」と助けの声が入る。
 「では車内のアナウンスが長く続いてる理由は?」とドレヴェー。「それは乗客にニュースを伝えてるからさ。
ときによっては車内は混み過ぎで新聞を広げられないから」(コリン・ジョイス作「『ニッポン社会』入門」)
 

 これを書いたときにコリン・ジョイスはイギリスで最高の発行部数を誇る日刊紙「デイリー・テレグラフ」の東京特派員。
 今はフリー・ジャーナリスト。1992年に初来日し神戸、埼玉、東京など各地を巡り「ニューズウィーク日本版」の記者を4年勤めた後「デイリー・テレグラフ」に移り日本中を取材していました。
 引用した文章は「『ニッポン社会』入門」の ”Every Day is April Fool’s” (毎日がエープリル・フール)の最初の部分。
 コリンの日本での体験が、’暖かみさと皮肉さ’の両面から、おもしろおかしく語っています。
 なお、(毎日がエープリル・フール)は私なりの翻訳で、もとは「「イギリス人をからかおう」となっています。
 このほか「おもしろい日本語 ー イライラ、しくしく、ずんぐりむっくり」
 「行動作法 ー 英国紳士とジャパニーズ・ジェントルマン」「二つの『島国』ー イギリスと日本は似ている!?」など読み出たっぷりの話を書いています。

・until they get home = 「彼らが自宅に帰り着くまで」 until は特定の時間までを示す前置詞/接続詞。
    cf :  The market is open until 9 o’clock. (マーケットは9時まで開いています)
       Please wait until Mom gets home. (ママが帰るまで待っていてね)
       You can’t drink beer until you are 20. (20歳になるまでビールを飲んではいけません)

・jingle(s)  = 擬音語。チリンチリンなどよく響く短い歌のこと。
              cf :Let’s sing jingle bells!   (ジングルベルを唄おう)

・a helpful voice chips in. = 誰かのほかの声が助けてくれる。
       chip in は「人の会話に割り込んで口をはさむ」こと

・go on = (話などを)続ける 

・open up = 「新聞や地図などを広げる」こと

 世界的な新型コロナウイルスの蔓延で外出時にマスクをすることは、日本の専売特許ではなくなったようです。
 日本はマスクをすべて輸入に頼っていたので、生産設備がなく慌てて手を尽くした結果、やっと落ち着いた状況になりました。
 世界のどこでもマスクを頻繁に使用することはほとんどないと言っていいでしょうから、
 コリンさんがこれを書き込んだことは一つのジョークとして通用したのです。
 あとの2つの話題「飛び降り自殺を防ぐため」と「乗客にニュースを伝えてる」もコリンさんのユーモアあふれる受け止め方。
 「ああ、そういう受け止め方もあるんだな」と笑ってしまう人がきっと沢山いることでしょう。

 最後にコリン流の「いくつかの役に立つ日本」を紹介しましょう!

・コンビニのこと:「ナナ、ジュウイチ」
・時間を聞くとき:「お時間ありますか?」
・女性を誘うとき:「(お)茶飲みませんか?」

 ただし、コリンさんは、実際に使っているかどうかについては触れていません。

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原島 一男

Kazuo Harashima

PROFILE

一般社団法人内外メディア研究会理事長、ノンフィクション作家。慶應義塾大学経済学部卒業。ボストン大学大学院コミュニケーション学科に留学後、1959年NHKに入局。国際局で英語ニュース記者・チーフプロデューサーを務める。定年退職後、山一電機株式会社に入社、取締役・経営企画部長などを務める。現在、英語・自動車・オーディオ関連の単行本や雑誌連載の執筆に専念。日本記者クラブ・日本ペンクラブ会員。『店員さんの英会話ハンドブック』(ベレ出版)、『オードリーのように英語を話したい!』(ジャパン・タイムズ)、『なんといってもメルセデス』(マネジメント社)など、著書多数。

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