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COLUMN コラム

日本人ビジネスマンの見たアメリカ

2015.07.27

「日本人ビジネスマンの見たアメリカ」No.17 『内部育成vs.ヘッドハンティング』

北原 敬之

Yellowstone National Park;イエローストーン国立公園はアイダホ州、モンタナ州、及びワイオミング州に位置するアメリカ合衆国の国立公園である。

アメリカに進出している日本企業を見ると、企業規模・業種・進出年数などによってレベルの差はありますが、生産・販売・調達などのいわゆる「オペレーションの現地化」には成功している企業が多く、日本企業の地道な現地化努力が実を結んでいると感じますが、「経営の現地化」についてはどうでしょうか? 今回のコラムでは日本企業にとって大きな課題である「経営の現地化」について考えてみたいと思います。

筆者の調査では、「オペレーションの現地化」は進出後10~15年で達成している日本企業が多いのに対して、「経営の現地化」は、まだ達成できていないか、達成するまでに進出後20年以上かかっている日本企業が多いようです。現地化が進んでいる日本企業でも、副社長クラスまでは現地化できていても、拠点トップである社長には日本人出向者が就いているケースが多いと言われています。その最大の理由は、拠点の経営をまかせられる現地人材の育成に時間がかかることだと思います。

「新卒で採用した社員を長い年数をかけて育て、その中から幹部社員・経営者を選ぶ。」という典型的な日本企業の人材育成システムは、「暗黙知の伝承による企業文化の共有」という日本企業の強みを支えるもので、長期雇用を前提とした日本のビジネス風土に適したやり方だと思いますが、「経営者を育てるのに長い年数がかかる」という欠点があります。この「内部育成・内部昇格」という日本的なシステムをそのまま海外拠点にも適用していることが、「経営の現地化」に時間がかかっている原因と考えられます。

では、アメリカ企業のように、いわゆる「ヘッドハンティング」を利用して、外部(競合企業も含む)から人材を調達するやり方はどうでしょうか?アメリカでは、いわゆる「プロ経営者」が複数の企業を渡り歩いて実績を積んでいくビジネス文化があり、そういう人材をスカウトするための「市場」もあります。(近年は日本でも複数の企業を渡り歩く「プロ経営者」が増えてきましたが、まだ少数派です。) このシステムは、即戦力の経営人材を短時間で調達できるため、時間をかけて育成する必要がなく、スピードという面ではベストな方法だと思いますが、日本企業に合ったやり方でしょうか?「責任と権限が明確」なアメリカの企業文化の中では、外部から来た経営者でも問題なく活躍できるでしょうが、「暗黙知」のウェイトが高く、「ウチ」と「ソト」を使い分ける日本の企業文化の中では、外部から来た経営者がすぐに力を発揮できるという保証はありません。

「内部育成・内部昇格」も「ヘッドハンティング」も、どちらが良い悪いということではなく、日本とアメリカそれぞれのビジネス風土の中で生まれ育まれてきたシステムであり、それぞれメリット・デメリットがあります。したがって、どちらのやり方を選ぶかは、その企業の業種・歴史・規模・社風・拠点の進出年数・現地化の進展度によってケース・バイ・ケースで決めるのがベストです。言い換えれば、その企業・拠点の「身の丈」に合わないやり方をすれば失敗するということです。

 

「経営の現地化」は、アメリカだけでなく、海外に進出している日本企業に共通する大きな課題ですが、筆者の経験からアドバイスできることは1つだけ、「急がない」ということです。日本の本社から「早く現地化しろ」というプレッシャーはあると思いますが、急がず、じっくり腰を据えてやることが肝要です。「オペレーションの現地化」は仮に失敗しても後で修復できますが、「経営の現地化」は失敗したら容易に修復できないし、最悪の場合「失われた○○年」になる恐れもあります。「内部育成・内部昇格」でも「ヘッドハンティング」でも、下記の点に注意して進めることが必要だと思います。

①その拠点全体の実力が「経営の現地化」に相応しいレベルに達しているかを冷静に自己点検する。
②日本の本社や親事業部が「経営の現地化」に対応できる体制になっているかを確認する。
③現地人材の「候補者」の能力・人格をじっくり見極めること。(経歴やプレゼンテーションに惑わされない)

北原 敬之

Hiroshi Kitahara

PROFILE
京都産業大学経営学部教授。1978年早稲田大学商学部卒業、株式会社デンソー入社、デンソー・インターナショナル・アメリカ副社長、デンソー経営企画部担当部長、関東学院大学経済学部客員教授等を経て現職。主な論文に「日系自動車部品サプライヤーの競争力を再考する」「無意識を意識する~日本企業の海外拠点マネジメントにおける思考と行動」等。日本企業のグローバル化、自動車部品産業、異文化マネジメント等に関する講演多数。国際ビジネス研究学会、組織学会、多国籍企業学会、異文化経営学会、産業学会、経営行動科学学会、ビジネスモデル学会会員。

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