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COLUMN コラム

グローバル人事管理の眼と心 日本国内の日常業務から培うグローバルな仕事力

2016.06.20

【グローバル人事管理の眼と心(18)】「人事ブランド戦略」の意義(その4)

定森 幸生

「人事ブランド戦略」の成否は、第16回で説明した「会社の経営理念が実務現場で適切に体現されていることの検証プロセス」と、第17回で説明した「会社の事業戦略と人事戦略との整合性を確認するプロセス」のすべてのステージにおいて、経営幹部だけでなく、社内の広範な業務を担当する管理職および一般社員が、当事者意識をもって積極的に参画すること(employee engagement)に懸かっています。高度な戦略を策定することと、それを効果的に実行し成功裏に実現させることとは別ものだからです。

企業の市場好感度を維持・向上させる必須条件は、会社の経営理念や事業目標が、経営幹部、管理職、一般社員の個々の職責において明確に体現されている実態や、事業戦略を実行するのに相応しい人材が全力で仕事をしている姿を、社外のステークホルダーが企業活動の様々な局面で目撃し、会社全体としての求心力や一体感を実感できる機会を提供することです。それを無理なく実現するには、日常業務で直接対外ステークホルダーと接触する管理職や一般社員の言動が、決定的に重要になります。経営陣がどれだけ高邁な理念(management philosophy)や価値観(values)を掲げたとしても、社員一人ひとりが自分たちの仕事において具体的にどのような行動(behavior)をとるべきかを自覚していない限り、単なるスローガンに終わってしまい、対外的な訴求力は期待できません。

一般に、実行可能で効果的な戦略を定義し策定する際には、組織内の様々な部署の実務現場で、その戦略が想定し期待する具体的な行動に対する社員のコミットメントが得られており、それらの行動が数多く積み重ねられているかどうかを検証してみることが大切です。経営陣主導で戦略を策定し、それを受けて管理職や一般社員がその実行方法を模索する「後追い」の対応ではなく、経営幹部は自分たちが策定を検討している戦略がスムーズに実行できる社内環境がどの程度整っているかを確認する必要があります。言い換えれば、その企業の生産性向上に寄与する人材の採用・育成・登用などの重要な経営目標達成のために有効な、「望ましい言動」や「行動規範の具体例」、さらには「社員に求められる様々なコンピテンシー」などが、日頃から多くの実務現場で共有されており、そのような言動がたとえ些細なものであっても、上司だけでなく他部署の管理職や社員からも積極的に評価され尊重されるような組織風土を作る努力が不可欠です。戦略の案文を議論する前に、戦略の実現に相応しい組織ダイナミックスの整備を優先させるべきなのです。

「人事ブランド戦略」には、これから入社してくる社員を含む対外ステークホルダーに対する魅力度や訴求力を高める目的があることは言うまでもありません。それと同等に、というよりそれ以上に、様々な職務に従事する在籍社員すべてを対象に、多くの「特定多数の社員集団」に直接的または間接的に影響を及ぼす諸施策を実行することを目的としていますから、他の戦略策定の場合以上に、戦略目的を全社員に周知徹底させ、一人でも多くの社員のコミットメントを確保することが大切です。そのような在籍社員が、自社の人事戦略や事業戦略に対する理解と信認を高めるプロセスを経て、一般社員が管理職や経営幹部の立場で物事を考える機会を増やすことによって、管理職が部下の人材育成策の一環として、自身の管理職としての高度な判断や決断が要求される業務について部下に権限移譲(empowerment)しやすい業務環境を生み出すことも可能になります。

労働市場で希少性の高い優秀な人材(critical talent)を他の企業に先駆けてタイムリーに確保する(war for talent)ための環境整備の一環としての「人事ブランド戦略」を、新規に採用される高度人材と在籍する高度人材とが組織目標を達成するための協働体制を築き、相互に切磋琢磨して実力を高め合う業務環境を確立する契機にすることができれば、その「人事ブランド戦略」は成功したと言えるでしょう。

定森 幸生

Yukio Sadamori

PROFILE
1973年、慶應義塾大学経済学部卒業後、三井物産株式会社に入社。1977年、カナダのMcGill 大学院でMBA取得後、通算約11年間の米国・カナダ滞在を含め約35年間一貫して三井物産のグローバル人材の採用、人材開発、組織・業績管理業務全般を統括する傍ら、日本および北米の政府機関・有力大学・人事労務実務家団体・弁護士協会などの招聘による講演、ワークショップ、諮問委員会などで活躍。『労政時報』はじめ人事労務管理専門誌への寄稿・連載も多数。2012年に三井物産株式会社を退職後、グローバル・プラットフォーム設立。企業や大学の要請で、グローバル人材育成関連のセミナーやコンサルテーションを実施する一方、慶應ビジネススクール、早稲田ビジネススクールで、英語によるグローバル・ビジネスコミュニケーション講座を担当、実務家対象の社会人教育でも活躍中。

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