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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2018.09.18

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(55) 『2018年10月、日本あてビザ免除へ』

宍戸 徳雄

美しい仏教遺跡が数多く残るバガン

 西ラカイン州の民族問題への対応が遅々として進まず国際社会からの非難も高まっている中、ミャンマーの通貨であるミャンマーチャットの通貨安も止まらない。民政移管後、チャットが安定していた時期よりも50%以上も減価した水準まで通貨安が進んでいる。ミャンマー中央銀行による通貨買い支えの市場介入などの政策発動もあったが、輸入超過の実体経済の基本構造は変わっておらず、通貨安に歯止めをかける効果は生まれていない。

 そのような中、ミャンマー政府は、「Look East Policy」として、2018年10月1日より、日本、韓国、中国、香港、マカオの旅券保有者の入国ビザ(観光ビザ)の免除を発表した。
(日本は、ヤンゴン、マンダレー、ネピドーの3空港に加え、タイ国境の入国ゲートからの入国ビザも免除される。中国、香港、マカオはアライバルビザの形での許可となる)。

 これまで、ミャンマーに入国するためには、観光、商用にかかわらず、入国ビザの取得が義務付けられており、その手続きの煩雑さが問題として指摘されることも多かった。
 近年は、Evisaシステムを導入して、手続き的な改善も見られたが、引き続きビザの取得が入国上必須であった。今回の政策変更により、1年間の限定措置という建付けではあるが、日本をはじめとした一部の東アジア諸国あてのビザ免除は歓迎すべきことだろう。日本や韓国からのミャンマーへの観光目的での入国者は、欧米対比まだまだ少ないが、今回のビザ免除によって、今後、観光目的での入国者の増加が期待されている。

 このように、一部の東アジア諸国あてに、ミャンマー政府が、ビザ免除政策を「Look East Policy」として発動した背景は、西ラカイン州の民族問題が未解決の中、アメリカやヨーロッパ諸国からの入国者が激減していることが指摘できよう。
 ホテル観光省の発表によれば、全体としては、2018年7月末時点で、2%程度の外国人の入国者の減少が認められている(全体の入国者数:197万人)。その内訳として指摘しなければならないのは、欧米諸国からの入国者が著しく減少している(ヨーロッパからの入国者は約25%超のマイナス、北米からの入国者は約15%弱のマイナス。欧米合わせて20万人程度のマイナス)ことである。

 ミャンマー国内には、バガンの仏教遺跡群やインレー湖など、観光資源が豊富にある。特に、バガンは、欧米の観光客には人気が高い観光地であった。観光客が落とす外貨も、外貨不足に苦しむミャンマーにとっては、その額は大きかった。上述のように、西ラカイン州の民族問題への対応で、国際社会、特に欧米諸国からの非難が高まる中、欧米からの観光客やビジネス目的の入国者が激減するという副作用が生じたことで、ミャンマー政府としては「Look East Policy」という、かつてマレーシアのマハティール首相が唱えたフレーズを使って、東アジア諸国重視の政策変更へ舵を切らざるを得なかった背景がある。

 日本など、東アジア諸国あてのビザ免除は歓迎すべきことではあるが、政策論としては、かつてのマレーシアのように、実効的で政策効果の大きい「Look East Policy」を本格的に指向すべきであろう。表面的で政策効果の小さい建前だけの「Look East Policy」を小手先で行っても、ミャンマーの実体経済の構造が変わらなければ、通貨安の問題などの根本的な解決にはつながらない。
 まずは何よりも、国際社会や近隣諸国の協力と理解も得ながら、西ラカイン州の民族問題の解決に積極的な姿勢を見せていくことが必要であろう。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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