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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2019.03.25

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(61) 『中国が主導して開発を進めるSEZ・深海港開発の今 その1』

宍戸 徳雄

ミャンマーの西海岸の美しい海

 中国は、日本政府がヤンゴン近郊のティラワSEZ開発を始めるよりも遥か昔より、ミャンマー北部(ラカイン州)の深海港に適したチャオピューに目を付け、開発を進める流れを進めてきた。ミャンマーは、中国雲南省と隣接し、かつての軍事政権時代より親密なに二国間関係を築いてきた。今でもミャンマー北部のかつての王朝都市でミャンマー第二の経済都市でもあるマンダレーは中国の影響力が際立っている。

 チャオピューは、大型タンカーが入港可能な深海港に適した海があり、チャオピューの港から雲南省昆明まで石油を運ぶことを想定したパイプラインを敷く工事を、中国はすでに完了している。そのパイプラインの長さは、およそ800km以上にも及ぶものだ。中東からの中国の石油輸入は、マラッカ海峡を通して中国本土まで運ぶルートが一般的だが、チャオピューからマラッカを経由せずに石油を入れることができる地政学的メリットは大きいものと分析されている。中国政府は、このチャオピューの開発について、インド洋と中国を繋ぐ「一帯一路」構想の中で、極めて重要な位置付けにあると発言をしている。

 中国は、このチャオピューのSEZ・深海港開発を、CITICグループを中心としたコンソーシアムを組成する形で、事業全体のスキームを構築してきた。このコンソーシアム組成の当初の計画では、およそ100億ドルにも及ぶ開発プランを作成し発表していた。計画によればチャオピューSEZは、4200エーカーにも及ぶ広大なものだ。
 この中国コンソーシアムとミャンマー側との権益分配の構造は、中国側が85%、ミャンマー側が15%と言う、かなりバランスの崩れた前提で話が進められてきた(日本が進めるティラワSEZ開発は、ミャンマー側が51%を確保している)が、昨年この権益分配の割合と、事業規模を含む開発スキーム全体の見直しが、ミャンマー側からの強い要請で、中国側と交渉が断続的に行われてきた経緯がある。

 まず昨年までに合意に至ったとされているのは、事業規模の大幅な縮小だ。当初は、大規模な港湾施設や多数の埠頭の建設を計画して73億ドル規模の事業規模を見込んでいたが、それが大幅に縮小され、第一段階として、当初計画の5分の1以下の13億ドル程度の開発からスタートすることで協議がまとまったとされている。
 権益配分についても、当初の著しい偏りを修正し、ミャンマー側の権益を3割程度まで確保させることで、中国側が譲歩する形となるようだ。
 中国政府が、習近平体制以前より長い期間をかけて、肝いりで進めてきたチャオピューの開発計画が大きくて見直されることは、中国の「一帯一路」構想にも少なからず影響をもたらすものと思われる。

 次回のコラムで詳細を分析する予定であるが、ミャンマー政府は、開発に伴う過大な債務負担問題を問題視し、この修正協議に大きく舵を切ったらとされている。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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