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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2019.11.05

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(68) 『スーチー国家顧問、即位礼正殿の儀に合わせ来日』

宍戸 徳雄

安倍首相との会談に臨むスーチー国家顧問

 10月22日に行われた天皇陛下が即位を内外に宣明する「即位礼正殿の儀」に合わせて、ミャンマーのスーチー国家顧問が来日。前日の21日には安倍首相が各国要人23人と即位祝賀外交をスタートさせる中、スーチー国家顧問とも早々に会談を実施。安倍首相は、25日までおよそ50人に及ぶ各国要人との会談を行なったが、その初日のトップを切る形の会談となり、メディアでも多く取り上げられた。

 安倍首相は、スーチー国家顧問との会談の中で、国際社会が注目し、時にミャンマー政府への対応へ懸念と非難が高まる西ラカイン州の民族問題とバングラディシュへ逃れた難民の帰還について、日本政府としては、ミャンマー政府の取り組みを最大限後押ししますと述べ、従来より当該問題に対する独自のスタンスを取ってきた日本の姿勢を維持することを明言した。ともすれば、この問題で国際社会から孤立化の恐れもあるミャンマー政府としては、日本政府の引き続きの中立的な独自の支援スタンスにつき明言を得たことは、大変意義深いものであろう。

 またスーチー国家顧問は、JETRO主催のセミナーにも出席し、「国の安定のために日本からの投資に期待したい」と、出席した数百社にも及ぶ日本企業に対して持続的な投資を求める一方、安倍首相との会談でも話題となった西ラカイン州の民族問題については、直接的には触れることはなかった。スーチー国家顧問が特に強調したのは、厳しい民主化の道のりの中で、国家の安定と経済成長のバランスを取る必要性があるということだ。彼女が言う「国家の安定」の基礎には、135にも及ぶ少数民族との共生が不可欠であり、西ラカイン州の民族問題も含む多民族・多宗教国家としての統治機構の安定化を念頭に、広く国民経済を発展させることが同時に不可欠な要素となるという理解だ。ミャンマーの農村部や山岳部では、民政移管後のミャンマー経済の急成長の恩恵を受けるまでには至っていない。広く国民が経済発展の恩恵を享受できるようなるためには、日本を含む海外からの投資を一つの基盤とせざるを得ないのがミャンマーの実情だ。

 西ラカイン州の民族問題への国際社会からの懸念は引き続き高まっているものの、2017年、2018年度の外国投資許可件数は過去最高を更新している。2019年もおそらく過去最高の許可件数を更新するだろう。ASEANにおける投資先としては、ミャンマーは引き続き魅力的な潜在力のある大きな市場であることは間違いない。
民政移管以降、日本は、官民共同で足並みを揃えながら、ミャンマーを我慢強く支えてきた。当初日本が行ってきた投資の果実も少しずつ実ってきている。
今回、即位礼正殿の儀に合わせた短期間の来日であったが、スーチー国家顧問としては、変わらない日本政府のスタンスと、日本企業向けの投資セミナーでの手応えを十分に感じることができたのではないだろうか。その意味において成果のあった来日であったと評価できるだろう。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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