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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2019.12.02

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(69) 『観光客向けアライバルビザを西側諸国へ拡大』

宍戸 徳雄

美しい風景が残るヤンゴン

 ミャンマーは、2018年10月1日から1年間の期間限定制度ということで、日本、韓国、中国、香港、マカオの旅券保有者の入国ビザ(観光ビザ)の免除を発表して運用がなされていた。

 国内的には、西ラカイン州の民族問題がなかなか解決しない中、観光客数の減少が懸念されていたが、このビザの免除の効果は大きく、観光客数は大きく伸び、ビザ免除政策は一定の成果を上げたと評価できる。日本からの観光客も大きく増加し、日系の旅行社を含め、ミャンマーへの観光ツアーが数多く企画され、かつてビジネスマンしか見かけなかった日本からの直行便の飛行機の中には、日本人観光客たちの姿を多く見かけるようになった。

 そして、ミャンマー政府は、今年2019年10月、更に同制度の1年間の延長を発表。
 加えて、ロシア、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、オーストリアも、観光ビザのアライバルビザを認めることを発表、対象国を大きく増やすことになった。2018年10月の制度導入時は、「Look East Policy」の一環として東アジア5か国を対象としてスタートした制度であったが、今年からは、ここにヨーロッパ諸国を加えた形となり、「Look East Policy」の趣旨であった東アジア優遇措置的な意味合いは消滅した。2018年時点で、西ラカイン州の民族問題を非難する国際社会の声の中心は西側欧米であった。そのような環境下において、一時的に「Look East Policy」という東アジア優遇措置的なスタンスに傾いていたことは理解できるが、今回、政治的なスタンスを超えて、一部のヨーロッパ諸国をビザ免除の対象国としたことの意味は大きいだろう。やはり、観光収入はミャンマーの経済政策上、無視できないものであるのだ。実際に、2018年度は、ヨーロッパからの観光客数は25%以上減少したと試算されており、今回のビザ免除がその減少を食い止めるきっかけになることは間違いないだろう。

 2018年10月以前のミャンマーへの入国許可制度はとても煩雑で、ビザの取得に手間とコストがかかることの弊害がとても大きかった。2018年10月に、1年間の限定制度として試験的に運用をした同制度が、開始から1年後に対象国が増え、更に期間延長を伴い定着していくことは歓迎されるべきことである。

 ミャンマーは、バガン遺跡だけでなく魅力的な観光資源が豊富にある。ビザ免除によって、世界中のより多くの観光客が、ミャンマーの魅力を知ってもらう素地になることを期待したい。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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