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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2020.06.08

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(75) 『ミャンマーでも生産された安倍総理のマスク』

宍戸 徳雄

ミャンマーの縫製工場の様子

 ヤンゴン郊外、特にヤンゴン国際空港から北西部のエリアに、工業団地群が複数ある。これらの工業団地群は、ミンガラドン工業団地など含め、日本政府が肝煎でミャンマーの民政移管後、開発支援したティラワ工業団地よりもはるか昔から開発・稼働していた。

 中国系、台湾系、マレーシア系、シンガポール系、韓国系など、様々な国々からの委託生産工場などが当時から進出していた。現在では、日系企業も進出しており、縫製工場など繊維産業を中心に委託生産工場が稼働している。

 今回のコロナ禍で、特に中国を生産拠点として構築されていたサプライチェーンの稼働が止まった影響を日本でも大きく受けることとなった。工業製品だけでなく様々な産業分野のサプライチェーンが中国依存型であったことが響いた形だ。当初8月開催予定であった2020年東京オリンピックを見込んで建設ラッシュであった建設業界も、建材や内装家具などの供給が中国からストップし工期に大きな影響が出た。またコロナ緊急事態宣言の発出によって、マスクやトイレットペーパー、消毒液などの家庭用品の買い占めも問題となる中、マスクが市場に流通しないことが大きな社会問題となり、中国での生産依存、日本への輸出規制など様々な問題が明らかになった。

 そのような中、日本政府が、国民各世帯向けに布マスクを2枚供給する旨を発表。通称アベノマスクなどと言われているが、伊藤忠商事など4社が受注、6月中旬までに全世帯に配布が完了する予定で、受注企業のうち2社については、ミャンマーのヤンゴンでのマスク製造を行っていることが報道された。製造国がどこなのか、野党や日本のメディアが注目したのは、4月中旬頃、配布されたマスクの中に異物混入やカビが付いていたなど約5千件以上のクレームや報告が政府宛になされたことがきっかけとなった。異物混入マスクがミャンマーで製造されたものではないか?と疑いを向ける報道が多く出たが、現在までにミャンマーで製造されたマスクに異物が混入されていたかの事実公表はない。実際に、ベトナムなど、ミャンマー以外の国でも委託製造されており、ミャンマーだけが主犯者扱いされ、工場の衛生管理体制など問題に挙げられたことは、ミャンマーにとっては不本意な報道であったと言える。

 今後、様々な分野の製品製造について、中国一辺倒の生産体制が見直されることになるだろう。特に、繊維縫製製品については、今後も中国からミャンマーへの生産シフトが増加するであろう。数年前のタイの大洪水がきっかけになり、自動車産業のサプライチェーンの再構築がA S E A N周辺へ一気に生産シフトを引き起こしたことと同様、今回のコロナ禍をきっかけに、同様の生産シフトが中国からA S E A N各国へ広がるであろう。中でも、ミャンマーは、周辺A S E A N諸国対比、引き続き、労働競争力を維持していることが功を奏するであろう。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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