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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2017.07.18

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(40) 『ロヒンギャ問題、国連調査団の受け入れ拒否の衝撃』

宍戸 徳雄

開発も進み成長著しいミャンマーだが、スーチー氏の少数民族問題への対応に注目が集まっている

 アウンサンスーチー国家顧問は、2017年3月に国連人権理事会によって決定されていたロヒンギャ問題に対する調査ミッションの受け入れを拒否し、国際社会に衝撃が走った。

 ミャンマー国内では、国軍系旧与党(USDP)の議員を中心に国連からの調査圧力に手緩い対応をすべきでないとの強硬論が勢いを増し、世論を後押ししていた。

 上述の国連決議は、ミャンマーの北西部ラカイン州における少数民族であるロヒンギャの市民権をめぐる争いを背景に、ミャンマー国軍などによる深刻な人権侵害行為が行われている疑いがあるとの報告を受けてのミャンマー政府あての調査受け入れの要請の決議であった。国連難民高等弁務官事務所による2月の報告書によれば、ミャンマー国軍が行っているロヒンギャ族に対する迫害行為が、人道に対する罪に該当する可能性が高いと指摘し、すでに数百人に及ぶロヒンギャの人々が命を奪われており、事態は深刻であると報告していた。これらの報告書は、実際に、国連が国外に逃れたロヒンギャ族から聞き取り調査を行った結果によるものであった。昨年より、およそ7万人以上のロヒンギャ族が迫害を逃れバングラディッシュなどの近隣国へ避難していた。

 すでにこのコラムの第36回でも指摘していたが、スーチー国家顧問は、当初、ミャンマー国軍によるロヒンギャ族に対する迫害行為を止めさせると発表していたものの、仏教徒が9割を占める国内のイスラム教徒に対する世論と、ミャンマー政府の統治機構上の軍へのコントロールの脆弱性の問題とが複雑に絡み、強力な指導力を発揮できずに対応に苦しんでいた。

 そのような状況の中、ミャンマー政府は、国連の決議は、事実に対応するものではないし、ミャンマー国内を分断させるものだとして、調査ミッションの受け入れを拒否した。このミャンマー政府の対応に対して、国際社会からの非難は高まりを見せており、米国国連大使は、ミャンマー政府を名指しで、国連決議による調査の受け入れをすべきであるとの要請を7月に入り行っている。

 国際社会からの圧力が高まる中、スーチー政権としても、打開策を見出そうとしている。3月に行われた国連人権理事会の決議に基づく調査ミッションとは、別の位置づけの調査ミッションとして、国連の調査団の受け入れを許可すると発表、ロヒンギャ族への迫害調査も含むものであるが、ティラワ経済特区周辺への住民への迫害調査を含め、調査団の受け入れを7月に行うこととなった。

 世論の動向や国軍との関係にも強い影響を受けざるを得ないロヒンギャ問題。この難題に対する舵取りを間違えると、国内だけでなく国際社会からもいっきに信頼を失うことになる。先般の補欠選挙では、引き続き万全な選挙の強さを示す結果となったが、今後、ロヒンギャ問題への対応を間違えると、スーチー政権を大きく揺るがすことになるだろう。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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