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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2017.04.24

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(37) 『ティンチョー大統領の中国訪問から見る中緬関係』

宍戸 徳雄

ティンチョー大統領の訪中

 ミャンマーのティンチョー大統領が、2017年4月10日に中国を公式訪問した。
NLD新政権発足後、アウンサンスーチー国家顧問も、2016年8月に、日本への公式訪問(2016年11月)よりも早くに中国訪問を果たしていた。当時、日本への公式訪問が、中国やインド、イギリスなどに遅れること7か国目だったことが、中国重視・日本軽視への政策姿勢の変更かとの評価も数多くも出たが、今回のティンチョー大統領の訪中についても、未だに実現していない日本への公式訪問に先を越される結果となった。

 ティンチョー大統領は、今回の中国訪問で、習近平国家主席と会談。中国が進めているミャンマー西北部(チャオピュー)の経済特区の開発やインフラ整備支援、その他今後の投資促進や二国間の貿易についてなど、経済関係の課題について建設的な意見交換がなされた。チャオピューの開発と関連して、経済特区と国境を接する中国雲南省を結ぶ原油パイプライン(800キロメートル)の敷設についても合意した。
 また、同時に、ティンチョー大統領は、これまでの中国によるミャンマーへの支援に対して感謝を伝えるとともに、中国政府が求めている「一つの中国」「一帯一路(シルクロード経済圏構想)」政策について賛同と参加の意を表明した。
 そして、2017年5月に北京で開催予定の「一帯一路」サミットに、アウンサンスーチー国家顧問が参加することを表明した。

 これに対し、習近平国家主席は、双方の核心的利益の尊重と、多方面に亘る相互交流と友好関係の発展へ向けた支援を表明し、引き続き、ミャンマーへの積極的な関係強化の姿勢を明示した。

 中緬関係は、上述のようなミャンマー新政府の国家元首、国家顧問の両者による早期の中国訪問の実現により、旧軍事政権時代の長い蜜月関係から、民政移管時(前政権)の反中世論の高まりを背景とした関係悪化の段階を経て、現在NLD新政権の下で、新しい発展的な関係構築へ向けて、外交的には順調な滑り出しを見せていると評価できるだろう。
 もっとも、このようなミャンマーの新政権の中国重視の姿勢とも評価できるスタンスが、翻って、日本軽視への政策変更を意味するものでは全くないだろう。

 ミャンマー新政府が、中国を重視するのは、国境を接する直接的な隣国である中国との間において、国境付近の少数武装勢力との紛争など様々な課題を抱えており、その解決のためには、中国と課題共有が不可欠であると考えているからであろう。
 また、前政権時に高まった国民的な反中感情を背景として、中国が手掛けるミャンマー国内における様々な開発プロジェクトが頓挫することになった一方で、日本やシンガポールなどを中心とした新しいパートナーのプレゼンスが高まったこととのバランスを取る必要性を感じているからであろうと、私は分析している。
 つまり、ミャンマー新政権は、「全方位的な」外交スタンスを掲げ、前政権時に中国軽視・中国排除に拍車がかかり、その潮流の中で日本などの新パートナーへの比重が大きく高まった状態を少し元に戻そうと、全方位外交実現のための適正化を図っているものと思われる。
 もちろん、日本との関係が相対的にバランシングされ、日本のプレゼンスが低下したかと言えば、単純にはそうはなっていないし、日緬関係は更なる発展段階・深化段階に入ってきている。
 昨年、アウンサンスーチー国家顧問が来日した際、安倍総理から、およそ8000億円規模の支援を取り付けたことは記憶に新しい。日本は引き続き、官民あげてミャンマーへの支援を多方面に亘り行っていくスタンスに変わりはないし、ミャンマー側からの期待感も大きい。日本は、インフラ整備や都市開発、エネルギー分野だけでなく、教育や医療、農業など、様々な分野への支援貢献が期待されている。

 以上、概観してきた通り、ミャンマー新政権は、「中国寄り」の中国重視政策に転換したわけではないし、「日本寄り」の日本重視のスタンスを変えたわけではない。あくまで、全方位外交政策の下、どちら寄りとも偏らないようにバランスを取ることを、基本的なスタンスとして注力していると評価できよう。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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