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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2017.12.04

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(45) 『ローマ法王、ミャンマーへ』

宍戸 徳雄

ローマ法王の訪問を伝える現地新聞

 ローマカトリック教会のフランシスコ法王が、11月27日から3日間の日程で、ミャンマー入りした。ミャンマーが西ラカイン州の民族問題で国際非難を浴びる中、ローマ法王のミャンマー訪問で、その発言に世界中から注目が集まった。

 法王の訪問に先立ち、アメリカのティラーソン国務長官は、西ラカイン州において、明らかに民族浄化が行われたと断定的な発言をして、ミャンマーによるロヒンギャへの迫害行為に対して強い懸念を表明していた。

 ローマ法王は、ミャンマーに到着後、スーチー国家顧問兼外務大臣、ミンアウンライン国軍司令官とそれぞれ会談、ヤンゴンでは、仏教国ミャンマーにおいて、大規模なミサを行い20万人にも及ぶ多数のキリスト教徒が集まった。仏教徒が9割を占めるミャンマーにおいてこれだけのキリスト教徒が集まったことは、世界のメディアも大きく注目する事態となった。

 法王は、滞在中の演説の中では、ロヒンギャという表現は一切使わずに、ミャンマーの長い歴史において民族同士が分断していることについて、寛容の心で困難を乗り越え和解と平和を希求するというメッセージを送り続けました。今回、法王が、ロヒンギャという表現を使わなかったのは、西ラカイン州の少数民族への人権侵害問題が大きく国際問題化する中、ミャンマー政府が、公式にロヒンギャという表現を使わないスタンスであることへの配慮があると思われる。また法王は、西ラカイン州の問題として特定させない形で、ミャンマーにおける民族分断の問題は、政治的にも宗教的にも解決されるべき優先課題であるとも言及して、民族融和を強く訴えた。
 アウンサンスーチー国家顧問は、法王との会談後、法の下に人権尊重がなされなければならないとして、西ラカイン州の問題解決について明言を避けたものの、バングラディッシュへ逃れた大量の難民の帰還へ向けて具体的に一歩踏み出す姿勢を見せている。今後の難民の帰還問題についてのミャンマー政府の対応について、国際社会は注目せざるを得ない。

 このような情勢下、アウンサンスーチー国家顧問は、中国を公式訪問する。中国政府は、西ラカイン州の問題は内政問題として、国際社会や国連、米国、英国が個別に介入すべきでないとのスタンスを取り続けてきた。今回のローマ法王の訪緬を受けて、国際社会の関心度が高まったが、その後のミャンマー政府の対応について、中国政府の理解と後押しを受ける狙いがあると思われる。

 ローマ法王は、ミャンマー訪問後、バングラディッシュを訪れ、ハシナ首相と会談、その後、西ラカイン州から逃れてきた難民たちと面会する予定。法王の難民との面会が、メディアを通じて、国際社会に与えるインパクトは大きいだろう。

 ミャンマーは民主政権樹立後、国際社会からの投資を基盤にして、新しい国家建設に注力してきたが、ここにきて西ラカイン州の問題で大きな躓きを見せている。アメリカも、独自に制裁措置を復活させる動きを見せている。
 このような情勢下で、アウンサンスーチー政権が、中国依存型の外交スタンスに政策転換することは、かつて軍政ミャンマーが国際社会から孤立した時代への回帰を想起させてしまう。
 もちろん、本件の解決に向けた舵取りの困難さを、国際社会も共有しなければならないが、ローマ法王が訴えたように、民族融和と和解のための第一歩を、政治的に踏み出すタイミングが来ていると思われる。アウンサンスーチー政権による、先送りでない、抜本的な解決に向けた歴史的な意思表明が期待される。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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