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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2018.01.04

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(46) 『ティンチョー大統領、初来日』

宍戸 徳雄

大統領として初来日を果たしたティンチョー大統領

 ティンチョー大統領が、大統領の立場としては初、個人的には40年ぶりの来日を果たした。大統領就任後から積極的に外遊活動を行っていたが、日本については、中国をはじめとして他のアジア諸国への訪問に大きく遅れる形となる訪日となった。

 安倍総理との会談では、詩人でもあったティンチョー大統領の父親が、かつて大阪外国語大学の客員教授として、日本語ミャンマー語辞典の編纂に努められていたことも紹介され、日本とゆかりのある大統領として歓迎を受けた。

 近年、ミャンマー国内で、日本語学習ニーズが高まっていることも話題となった。2017年に行われた日本語能力検定試験の応募者が2万人を超え(世界で6番目、ASEAN域内で3番目に多い)、ヤンゴンやマンダレーの外国語大学の日本語学科への入学希望者は、英語に次いで2番目の人気を博している。これは、民政移管後のミャンマーへの日系企業による投資進出ブームを背景として、学生たちによる日本語を活かした就職先の増加への期待感の高まりでもある。同時に、日本語学校が乱立されるものの、急増した日本語学習ニーズを適正に満たす日本語教師の養成が追いついていない点も課題として指摘された。
 また、安倍総理の父である安倍晋太郎外相時代のミャンマー訪問時のエピソードなども紹介され、長く続く日緬間の友好関係の演出を行った。

 会談の中で、安倍総理は、現在大きな国際問題ともなっている西ラカイン州で起こっている民族問題について懸念を示し、ミャンマー政府として解決へ向けて取り組み、国際社会へ成果を示すよう求めた。一方で、これまでの日緬関係の深化を更に発展させるため、交通、電力などのインフラ分野、ヤンゴンにおける都市開発やラカイン州における道路などのインフラ整備や学校建設への協力を確認、およそ8千億円の円借款についても言明した。ティンチョー大統領も、これまでの日本からの協力支援について感謝を表明した。

 ティンチョー大統領と言えば、スーチー国家顧問の昔からの側近。時には、スーチー氏の運転手も務めていた。オックスフォード大学卒で官僚出身。知的で優秀な実務家エリートであるにも拘わらず、それを表に出さす従来より物静かで目立たない存在であったが、大統領となった今も、表舞台に立つスーチー国家顧問を影で支える存在に徹している。ミャンマー国民からの信頼も厚い。

 今回のティンチョー大統領の来日が、中国への公式訪問よりも時間的に遅れたことから、日本国内では、中国寄りの大統領ではないかとの懸念や評価がなされたこともあった。しかし、結果的に中国への訪問に遅れることとはなったが、それは全方向バランス外交を志向する現NLD政権の基本方針に沿ったものであったと言え、訪日が遅れたことに懸念されるような深意はないと思われる。

 ミャンマーは、現在、西ラカイン州の民族問題への対応で解決策を示せず、国際社会からも強い非難にさらされている。その政権運営の表舞台に立つアウンサンスーチー国家顧問と、それを影から支える実務家であるティンチョー大統領。彼らの二人三脚の政権運営が、NLD政権の中核的な基盤であり、国民からの信頼を背景に、この難局を乗り切ることが期待される。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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