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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2018.04.02

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(49) 『ティンチョー大統領辞任』

宍戸 徳雄

新大統領に選出されたウィンミン氏

 3月21日、ティンチョー大統領が突然の辞任表明。以前より健康上の問題が取りざたされていたが、本人より休養を取りたいとの理由での辞任のようだ。ティンチョー大統領は71歳、スーチー国家顧問は72歳、共に高齢での行政府のトップを担ってきていた。

 NLDによる2016年の歴史的な総選挙の圧勝に伴い成立したスーチーNLD政権。
 憲法の規定上、大統領に就任できない(就任要件に欠ける)アウンサンスーチーNLD党首に代わり、大統領に就任したティンチョー大統領。かつてスーチー女史の運転手も務めた側近中の側近だった。語学も堪能で行政経験もあり、物腰柔らかい謙虚な人柄は、国民から愛されていた。昨年は大統領就任後、だいぶ時間が経過していたが、念願の来日も果たしていた。

 スーチー女史が大統領を超える存在として企図して創設をした国家顧問職。国家顧問省を創設し、自ら国家顧問に就任して以降、ミャンマーの大統領職は、儀礼的でお飾り的な国家元首の位置づけに変わった。その位置づけの変化と意味合いについてもよく理解を示し、健康上の問題を抱えながらも、その職務を全うして、永年の盟友であるスーチー国家顧問を支え続けたティンチョー大統領の辞任に、国民の間では惜しむ声が多数広がった。

 新大統領は、ミャンマー連邦議会(上院、下院)の全議員による投票により、28日、選出された。新大統領となったのは、ティンチョー大統領の辞任に伴い、下院議長を辞任していたウィンミン前下院議長。連邦議会の過半数を占めるNLDの候補者として、圧倒的多数の票を得て、新大統領に選出された。
 ウィンミン新大統領は、ティンチョー前大統領と同様、スーチー国家顧問が信頼を置く側近の一人。スーチーNLD政権によるスーチー国家顧問職を基軸とした国家統治の形態は、基本的には、以前と変わらず引き続き維持されるだろう。そのような意味では、政権基盤を揺るがすような政治的な空白も生じず、大統領交代に伴う混乱は起こらないだろう。

 ウィミン新大統領は、弁護士出身。かつて軍事政権時代の政治運動で収監された経験も持つ。既に、下院議長としての来日も果たしており、日本政府関係者とのパイプも持ち合わせている。また特に、ウィンミン新大統領は、ティンチョー前大統領と比べ、その実務的な辣腕ぶりは、過去の議会運営などを見ても顕著だ。ゆえに、むしろ、強力で有能な実務家として、儀礼職とは言え国家元首としての大統領職の機能強化が期待されよう。大統領職の機能強化は、スーチー国家顧問の権力を弱めるという側面よりも、相互に強力な権力機構として、NLD政権の安定した統治に資するものと捉えるべきであろう。

 政権交代以降、スーチーNLDの行政運営能力が常に問われ続けている。従来より、NLD内部における人材不足も指摘される中、民間人も含めた幅広い人材登用を進めていくことも期待されているが、今回の新大統領誕生による新2トップの相互機能強化が上手く進めば、政権の安定度を増すことに繋がるだろう。ウィンミン新大統領の活躍が注目される。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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