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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2018.12.10

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(58) 『難民の帰還の目途立たず』

宍戸 徳雄

黄金に輝くミャンマーの仏塔の光は、難民たちを照らすだろうか

 さる11月16日、国連総会の人権委員会では、ミャンマーにおける西ラカイン州における民族問題に対する非難決議が採択された。昨年より日本は、この問題に対して、ミャンマー政府への一定の理解を示して、欧米が取る強硬スタンスとは異なる独自のスタンスを取ってきており、昨年に引き続き、採決を棄権した。今回の採決は、142か国が賛成、中国、ロシアは反対、26か国が棄権。決議案は、西ラカイン州におけるロヒンギャ族への迫害行為を、民族浄化と非難。ミャンマー政府に対する強い非難決議となった。

 国際社会からの非難が集中する中、先般シンガポールで開催されたASEAN首脳会合において、アウンサンスー・チー国家顧問は、西ラカイン州からバングラディッシュに逃れ難民生活を送っている70万人にもおよぶ少数民族の帰還について、ミャンマー・バングラディッシュ両政府が共同で行う帰還事業の第一歩として、近くが帰還が始まるとコメントした。しかし、首脳会合に合わせたリップサービスとも受け止められ、非難の声がさらに強まる結果となってしまった。

 会合に先立ち行われたアウンサンスー・チー国家顧問とマイクペンス米副大統領との会談においては、ペンス副大統領は「ミャンマーの西ラカイン州で行われていることは、理由のない暴力であり迫害であり、被害を受けた少数民族に対する責任追及が進展することを望む」と、ミャンマー政府を強く非難し状況の改善をアメリカ政府として求めた。

 実際の難民の帰還情勢については、バングラディッシュ高官が、早期の帰還の実現は容易ではないと発言。当事者である難民たちからも、ミャンマーへ帰還しても人権が保障されないと危機感が噴出しており、帰還を拒否する難民が続出しているという。UNHCR(国連難民高等弁務官)の仲介で始まったこの帰還事業、当初の計画では、1日150名の難民の帰還を計画していたが、第一弾の帰還を予定していた家族から帰還を拒否される結果となり、いきなりスタートからのとん挫となってしまった。第一弾の帰還対象者は2250人リストされていたが、誰もが帰還後の人権保障を憂慮して帰還を望まなかったという。実際に、難民キャンプでは、帰還に反対する難民たちによる反対デモが行われた。

 このような状況を鑑み、バングラディッシュ難民委員会は、11月15日にスタートする予定だった帰還計画を延期すると発表。そこでバングラディッシュ政府は、難民たちの意思を尊重しなければならないというスタンスを強調。事実上、年内の難民の帰還スタートは難しい情勢となってしまったと言えよう。難民帰還の問題を、年内に帰還スタートとしてアピールすることで、局面の打開を図りたかったアウンサンスー・チー国家顧問としては、引き続き先の見えない困難な状況のまま年を越さなければならなくなってしまった。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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